2012年11月16日金曜日

TEAC X-10R AKAI GX280D-SSの修復・蘇生

1970年代中期から80年代初期にかけて製造された古典的なオーディオシステム オープンリール・テープデッキの修復・蘇生をしました。物を捨てられない症候群の 無銭庵 仙人 と申します。個人的な見解で過去からの経験と記憶を元に記述しているため 誤解釈・誤記載も多々あると思います。ご勘弁ください。古くから道楽・趣味で収集しました機器の自力での修復作業内容について記載しています。多少とも参考になれば幸いです。なにぶん製造メーカーからの資料も乏しく 営利を目的としない 道楽での個人的な内容、主観がほとんどです。ご了承ください。個人的な修理・調整作業における忘備録として作成しています。参考程度の記述内容とこ理解ください。 
記憶・経験・実験による記述と自己責任での作業です。骨董品機器の修復においては 電気回路・メカニズム構造が解読できなければ 修復は簡単な作業内容ではありません。ある程度の修理・調整経験がないと どこかの先生のような こ・わ・し・や になってしまいますのでご理解願います。    m(__ __)m

修復完了し動き出した TEAC X-10R 自己所有分

今回修復しました TEAC X-10R です。初期製造品は1979年ですが 当時はFMエアーチェック、生録に使用です。その後はほとんど手付かずで長期間経過しています。その後の常用録再機器はカセットテープデッキを複数台活用しました。道楽仲間の悪友との生録音は小中高等学校のブラスバンドの音楽会によく出かけています。高校生のバンドでは 2流、3流プロ演奏バンドより質の良い音楽を演奏します。下手な国内のジャズバンドより聴きごたえがあります。しかも入場料不要。学生は毎日同じ音楽を繰り返し練習しています。現在でもマーチィングコンテストの全国大会ではプロ以上の演奏テクニック・編曲で楽しくパレードしながら演奏します。当時友人に学校の先生がいたため会場での商用電源も確保できました。悪友はコンパクトカセットテープデッキ ナカミチ 1000、700、550を録音する場所により選択使用しています。時には田舎家でカエルのコーラス・蝉の合唱も生録音した記憶があります。悪友はDENON DH-710S TEAC A-2300 も所有していましたが当時搬送用自家用車を所有していなかったため 機材が重く生録音はカセットデッキ類を多用していました。小生は小遣いか乏しく 数多くの高級なデッキは購入することができません。X-10R導入以前から 小生は安価な7号リール3ヘッド1モーターデッキでしたが 機材が重たくてもオープンテープデッキ TC-6635,RD-1400 で生録音していました。マイクはオンマイクセッティングと違いミキサーを使わず 安価なワンポイント・ステレオマイクのセッティングです。当時のテープを再生すると 録音状態はプロのミキサー録音と違いマイク位置によりバランスの悪い録音状態です。その後ブームとなった参加費用の発生するJAZZなどの生録音会では 高級2トラ38デッキと高級マイクの乱立です。日本人JAZZ Band 演奏会 には参加していません。全国大会に出るような高校生クラブ活動での金管・木管・打楽器演奏で金賞受賞のプラスバンドではプロに負けない演奏であり 大編成ジャズバンド演奏です。迫力があります。毎年大阪城ホールで全国大会が秋にあります。

昔録音したテープを保管してあり 音源をデジタル化をする目的で X-10R デッキを動かしましたら故障状態であり 自力での修復を試みました。初期に使用していましたデッキは40数年経過している 1969年前後に購入したSONY  TC-6635 です。現在でも実働します。ただ1モーター、キャプスタンはアイト゜ラー駆動ですので操作性が悪く騒音も高いため夜間の使用は控えていました。当時TEACは高級品です。Aシリーズ3モーターデッキは高額であり懐具合により購入できません。以前 TC-6635 はACモーター進相コイルが断線し故障していましたが 7,8年ほど前にジャンク品をオークション500円で落札。ACモーター交換の結果 メカニズムのオーバーホールとゴム系の消耗部品は入手できませんが 何とか騙して動いています。昔録音していた7号リールテープのデジタル化を少しずつ実施ししています。音源は当時のLPレコード、FMエアーチェックがほとんどです。その後の X-10R では10号メタルリールの生テープは懐が寒いため数多くは購入できていません。CDプレーヤーはまだ機器開発途中でした。LPレコードが全盛時代です。当時の給与所得による収入から比較すると高額な10号メタルリール生テープです。安価なプラスチックリール10号テープも存在します。10号テープのデジタル化が進んでいません。くだらない録音も多々ありますが 今回修復を決意しました。古くから道楽で収集し 自己メンテナンスによりほぼ実働するオープンテープデッキが複数台存在します。現在PCを使って A/Dコンバーターと編集ソフトを使い CDフォーマットに変換し エディタープログラム(デジオン)で編集をしています。おかげさまで昔に比べ編集作業も楽になりました。又デジタル操作ですので音質が悪化しません。当時の音源はテープを切断してまでの編集はしていません。アナログ音源では編集・ダビング゛作業は音が悪くなるからです。無駄な箇所も多々ありました。デジタル音源はアナログ音源のような独特の音質は期待できません。しかしデジタル音源は操作が簡単であり音質に多少不満が残りますが 無精者には最適です。

オーバーホールおよび修理作業は 誰でもできる作業とは判断していません。ホームページを確認すると TEACでは Xシリーズであれば現在でもメーカー修理をしています。さすがAシリーズはほとんどの機種がメーカー修理をお断りしていました。
今回の修復にあたりメーカーに相談しましたが 直接機器をメーカーに送付いただければ できうる限り修復します との返事です。30年以上経過した機器ですが 修復できる音響メーカーは現在では多々ありません。TEACは優良企業と思います。旧機種でも保守部品を再生産しています。家電メーカー製では 経済産業省(旧通産)からの指導を楯に(部品保有年限) 10年もすれば機器は粗大ごみ扱いです。

TEACのサービス部門ではメーカーサービス以外での工具を使って分解修理、内部構造の部品交換などの機器 および 自己で修復された場合などの機器商品は メーカーサービスをお断りされるようです。 後は自己責任で修復か デッキ専門修理業者、産業廃棄物処理となりますので 申し添えます。メーカーサポートを得ることができません。オークションなどで入手した場合は機器の状態、修理経歴に ご注意を!!!!!
TEACサービス部門のホームページに機器修理における約款が記載されています。参考としてください。
参考 http://www.teac.co.jp/repairj_av.html

消耗品部品などの簡単な修理でも 数万円の修理費用+運賃が必要であり 重量も20Kgを超えます。精密機器ですので梱包も大変です。高額となるメーカー修理代金を覚悟しなければなりません。新品の商品は各社とも現在では販売されていません。あるとすれば業務用機器を製造していますオタリぐらいと思います。現在は生産終了となっていましたが在庫があるかもしれません。

あるオーディオ専門販売店では X-10R は ヘッドは新品と交換、メーカー オーバーホール済みの 中古品が10万円前後で販売されています。

デッキ修理よりはレンタル機器を借りて録音されたテープをデジタル化したほうが安価かも知れません。又業者にテープのデジタル変換依頼を検討されたら良いと思います。
過去の音響システム・骨董品機器を維持し動かしたい場合は 金銭的・技術的にも選択肢が限定されます。購入当初のスペックを得るには努力・費用・技術が必要となります。又場合により妥協もしなければなりません。趣味・道楽の領域ですので各自自己判断してください。どこかのお偉い先生方のような押しつけはしません。マインドコントロールする教祖的な誰であるかは想像いただければ結構です。自己責任、自己満足である 趣味・道楽の範囲ですので。

記載しました修復内容ですが メーカーからの修復に必要なサービスマニュアル・正規のテストテープ類が入手できない状態での修復作業内容です。参考程度の記述とご理解ください。誤記載・誤解釈も記載されていると思います。

修復完了し動き出した AKAI GX280D-SS

1975年製 AKAI GX-280D-SS  4チャンネルステレオ オープンテープデッキです。当時は日本ビクターが開発しました レコードによる CD-4 4チャンネルステレオ時代のテープデッキです。
その他国内各社はマトリクス4チャンネルステレオ装置が販売されていました。その結果 レコードプレヤーの特性が向上し ノイマン製レコードカッティングマシーン(SX-68)がよく使われました。特性のよいシバタ針が搭載された MM型カートリッジ が誕生しています。現在の デジタル・ドルビー・サラウンド(5.1, 7.1 システム)に類似した装置です。4チャンネルミュージックテープは国産であり 数多くの種類は販売されていません。短命であったと記憶しています。TEACでは Aシリーズが販売されていた時代のテープデッキです。

当時販売されていましたテープデッキではキャプスタンモーターにシンクロナスモーター(同期電動機) 又は安価な機器ですとインダクションモーター(誘導電動機)が多用されていました。インダクションモーターでは回転に滑りが発生します。負荷トルク、電圧変動などで回転数が多少変化してしまいます。機種により回転トルクは大きくないですが正確な回転数のヒステリシス・シンクロナスモーターを搭載した機種も存在します。電源周波数で回転動作するモーターであり日本国内では糸魚川・静岡構造線を境に似通って東西で電源周波数が異なっています。引っ越しなどが発生した場合最悪周波数の違うところでは回転数が異なり互換性が取れずサイクル交換といわれる作業が発生します。現在では各電力会社の発電する電力は周波数をコンピューター制御され電気時計でも誤差はほとんど発生しません。又ACモーターでは細かくテープ走行スピードも可変することができません。精密にテープスピードを調整するときにはモータープーリーの直径を変えた数種類のプーリーで工場では微調整していました。機種により進相コンデンサーの容量値を変更する機種もあります。一部のデッキではキャプスタン軸に50Hz用スリーブを取り付けて50Hz用とする機種もあります。他の方法では直径の異なる2段モータープーリーと2段フライホイールの取り付け位置によりサイクル交換する機種もありました。サイクル交換してもベルトの張力が大きく変わらないようにするための構造です。テープスピードは2種類で回転数の変更はモーターの極数を切り替える構造です。電源周波数が異なると 20%程度テープスピードが早くなったり遅くなったりします。
その後のカセットテープデッキではほとんど直流モーターで製造され サイクル交換作業はほとんど発生しません。テープスピード(ピッチコントロール)も簡単に調整できるような構造となりました。

左より フルトラック消去ヘッド 4/2トラック消去ヘッド 
4/4トラック録音ヘッド 4/4トラック再生ヘッド
直流モーターですと安価な機器であればメカニカルガバナーで回転スピードを調整しているため簡単にスピードは調整できません。その後整流子モーター電子ガバナー方式となりSVRでテープスピードは調整できますが安定した正確なテープスピードは得られません。高級なデッキではサーボ回路により回転数を制御し安定したテープスピードが得られますが回路が複雑になりコストアップとなります。その後VTRと同じダイレクトドライブブラシレスキャプスタンモーターも出現しました。テープスピードを大きく変えるにはモーターの極数を変える方式、駆動する3相交流周波数を可変する方式、チョッパー・PWM制御により供給されるパルス波形電力を可変する方式があります。安価なカセットデッキですと小型の直流整流子モーターでトルクも弱くドリフトが多いデッキも存在します。

このGX-280D-SSではキャプスタンモーターはACモーター構造ですがACサーボモーターで回転数を制御します。

キャプスタンモーターと制御基板
フェライト製 4tr/4ch録音ヘッド・4tr/4ch再生ヘッド
リールモーター・キャプスタンモーターはAC駆動です。4tr/2ch再生はリバース再生が可能な 4ヘッド仕様のテープデッキです。テープスピードは19cm/secと9.5cm/secの2スピードです。回転制御信号はL,C発振回路での基準信号とモーターからのFGパルス信号とを比較して回転数をコントロールする制御方式です。近年の安定したクオーツ・ロック、サーボシステムではありません。キャプスタンモーターはダイレクト・ドライブ アウターローター ACサーボモーター を使用しています。キャプスタンモーターは逆転できる構造です。メカニズムの構造によりベルトはカウンター用だけであり 駆動系には消耗品のゴムは使われていません。ただピンチローラーはゴム製品ですが。リールモーターはダイレクトドライブアウターローターAC駆動モーターを使用しています。

肝心のヘッドはその当時では珍しいフェライトヘッドが搭載されました。
(メーカー呼称 GLASS and X'tal  FERRITE HEAD)

フェライトヘッドの特徴としてヘッド摩耗しにくい構造です。パーマロイヘッドであればヘッドの摩耗状態はある程度目視で確認できますが フェライトヘッド面の摩耗状態は目視では確認することが容易ではありません。顕微鏡などで観察するとヘッドギャップ面の細かな傷・欠損・ギャップ部異物つまり状態が確認できます。長時間録音・再生を繰り返すと レベル低下が発生します。目視では判断できません。個人的な主観としてパーマロイヘッドの方が歪が少なく音質的にも好んでいます。テープガイド金具は金属ですので摩耗状態が目視確認できます。その後の機種では音質・歪など諸特性のよいパーマロイヘッドが多用されました。フェライトヘッドに比較すると安価ですが摩耗頻度は高くなります。後期に作成されたオープンテープデッキではほとんどフェライトヘッド系は一部の機種しか採用されていません。しかし家庭用VTRでは高速回転するビデオヘッド(回転ヘッド)は摩耗に強い剃刀の刃(ヘッドチップ厚みは100ミクロン程度)のような構造でフェライト・センダスト・アモルファス・ヘッドが採用されています。ビデオヘッド汚れ症状の時には セーム革でヘッド掃除をする場合 回転するヘッドの構造的な理解がないと ヘッドチップ破損事故も初期には多々ありました。

4チャンネルの独立した録音アンプ、再生アンプが搭載されています。ヘッド構成はフルトラックの消去ヘッド・4トラック2チャンネル用の消去ヘッド 4トラック4チャンネル各 独立した 録音、再生ヘッドが搭載しています。当時はまだ数が少なかったローノイズ、ハイアウトプットテープ用バイアス切替スイッチなどは搭載されていません。イコライザーなどで特性を変える構造です。Hz交換はコンデンサー容量のみの切替で事がすみます。テープスピードをコントロールするキャプスタンモーターはシンクロナスモーターを使用していません。ACサーボモーターです。AKAI GX-280D-SSについてはサービスマニュアルは英文ですが海外サイトより入手しました。マニュアルを参考に修復を進めます。

システムコントロール回路は半導体ディスクリート回路とリレーシーケンスが混同した回路構成で動作します。

小生オーディオ機器のあゆみ

小生のシステムにおいては オープンテープデッキはその後使用頻度が少なく長期間お蔵入りしています。音質・特性としてはオープンテープに比較して悪いですが コンパクトカセットデッキを常用として使用です。簡単に操作ができるためと生テープが安価です。その後VTRを利用したペーターHI-FI,VHS HI-HIはオーディオ機器としては導入していません。カセットテープは自己で録音した カーステレオ再生テープ用として活用しました。カセットデッキでは3台とも水平駆動メカニズムにこだわり 大型フライホイルのデッキです。フェライトヘッド仕様でしたが音質が気に入りません。歪も多いため パーマロイヘッドに改造しました。垂直メカニズムのデッキも複数台所有していますが いまだに押入れに入ったままです。CD-Rが普及するまでは 常用機器としてカセットデッキはオーバーホールをしながらの使用です。後半になると垂直メカニズムでオートリバース機能ばかりになり購買意欲はありません。CD再生は初期には1ビームピックアップのCDデッキを使用していましたが 1988年にDENON DCD3500Gを導入ました。現在でも動作します。カセットテープ録音音源としては  CD,LPレコード FMラジオ音源を録音し活用しました。2000年以前より パソコンによるCD-Rの普及により テープから記録媒体はCD-Rデジタル音源に変化しました。高圧縮率の音質がよくないMDは導入していません。現在はPC音源、PCM ICレコーダー音源、CD再生がメインです。記録・再生媒体は DVD、CD、メモリーIC、HDD、CD-R、DVD-R が主流ととなりました。アナログ音源についてはほとんど使用していません。
市場では近年オーディオにおいて PC・LAN・メモリー音源を利用したシステムがようやく販売されるようになりましたが ピンからキリまでの商品が販売されています。ほとんどが再生専用ですが小生は当初よりA/D・D/Aコンバータを使用しており アナログ音源は自己でデジタル化を進めています。デジタル音源についてもデジタル編集しています。

オープンリールテープデッキ全盛の時代においては 録音再生音源として FMステレオ放送、LPレコードからの録音再生、生録音再生、ミュージックテープ再生が主な音源でした。LPレコード再生については現在でも愛用される方が多数おられます。新規のLPレコードは数は少ないですが販売もされています。金銭的に余裕がある方ではプレーヤー自体のメカニズム構造は簡単であり ピックアップであるカートリッジは現在でも国内品・海外輸入品のカートリッジは簡単に入手できます。又消耗品の針は兵庫県北部浜坂にある宝石会社では費用と時間さえ覚悟すれば針を手作りしてくれます。(http://shop.jico.co.jp/しかし小生は懐具合と相談しなければなりません。現在においては保管状態によりスクラッチノイズなどが発生しないレコードはごく少数です。音源として雑音との戦いです。ところがオープンリールテープデッキとなると現在新品を入手することは至難の業となります。古典芸能の道楽を継続するにはクラッシックカーのように骨董品機器を修復・調整しなければなりません。電気回路・メカニズム構造が理解できないと自己での修復作業もできません。又修復してくれる会社も限定されます。費用もLPレコード再生よりも場合により必要となります。デジタル音源主流の現代において アナログ的な動作状態は 視覚的・聴覚的にもオープンリールデッキには魅力があります。10号メタルリールが静かに回転します。これらに引かれ過去の遺物を修復・調整しました。

メンテナンスの必需品 ヘッド消磁器

現在カーオーディオもデジタル化となっています。メーカー純正HDDナビ搭載車両ですので CDは自動でHDDに記録され 又自己編集記録したSDメモリーカードが音源です。オープンテープ・LPレコードなども含めアナロク音源はPCでデジタル加工し愛用しています。自宅では気分により LPレコード再生は骨董品の真空管式プリアンプと真空管メインアンプがが実働していますので たまには今回修復しましたオープンテープデッキなど懐古感により メカニックなアナログ機器を動かすのも気分転換となり 当時のアナログ音源を楽しんでいます。物によっては現在のCD再生に比較してアナログ独特の心地よい音質で再生されます。癖のある真空管システムと能率の良いスピーカーシステムとの相性が良いのかもしれません。

CDディスクが発売された当初LPレコードと音質を比較しましたが CDは音質が良いとは思いませんでした。当時ほとんどの音源はアナログであり CDは20KHzでカットされています。人間の耳では判別できない超高域成分がありません。LPレコードの45回転LPレコード再生のほうが音質は優れています。1988年DCD-3500G購入時音楽を再生しても感動はありませんでした。ただ購入後から古いLPレコーが各レコード会社がリメイクされたCDが多数販売されて購入しています。LPレコード再生に比較して操作が簡単でありスクラッチノイズの発生がありません。ほこり傷などに強く S/N比・ダイナミックレンジなどは優れています。CDは重宝しました。それと並行してカセットデッキが録音機器としてメインとなりました。オープンテープデッキではカセットテープより特性は良好ですがテープヒスノイズがCDに比較してS/N比を悪くしています。CD再生では高域周波数特性は20KHzまでです。100dB以上のS/N比が確保されています。19cm/sオープンテープデッキで再生される音質としてはLPレコード再生に劣ります。当時LPレコードより高音質を望むのであれは 2Tr38 のデッキを使用しなければなりません。FMチューナーではステレオ放送では高域特性はほぼ15KHzどまりです。19KHzのパイロット信号が復調用搬送波として存在します。副搬送波との緩衝などがあるため高域の上限は良くても18KHz程度と判断します。その意味もあり 長時間のエアーチェック用として1979年当時X-10Rを導入しています。FM電波伝搬において電界強度が弱い場合では雑音であるパルスノイズが入る場合があります。FMエアーチェックでは時々単車のスパークプラグ雑音で録音品質が悪くなっています。ドルビー内臓カセットデッキではFMステレオ放送を録音するときには問題が発生します。FM検波後の信号では ステレオ放送復調用パイロット信号である19KHz副搬送波が存在します。ドルビー搭載機ではノイズリダクション周波数特性が悪化しないように19KHzを阻止するフィルターが付加されています。高域特性はテープスピードが遅くオープンリールデッキに比較してS/N比を含めよくありません。しかし生テープの価格・操作性・利便性を考えればカセットテープに移行された方がほとんどです。dbx を使えばオープンリールテープデッキでもかなりS/N比は改善されますが小生の好みではありません。一部マニアの方が採用されました。

今回の修復作業に際しては ある程度の電気回路知識、メカニズム内部構造の把握および各部品レベルでの動作原理、理解がないと修復はできません。ご承知おきください。代用部品などを吟味して修復をしますので部品レベルでの安全性・耐久性を考慮する必要があります。自己責任での作業となります。

古典的な車のエンジン分解修理までの知識は必要でないとは思いますが 現代のコンピューター制御の車両は素人では修理できません。専用ソフトを搭載したPCでないと修理・調整も素人ではできません。開発途上国では古いタイプの日本製ノーマルミッション・エンジン搭載の車両が好まれます。中古パーツを使い自力で修理できるからです。以前のマイカー車両は20年間消耗品は別として故障もなく愛用しました。トヨタ・ハイエース100系ワゴン EFIコンピューター制御のガソリンエンジンです。今回お国より エコ車両買い替え補助金として20数万円還付を受けました。新車購入時の税金はエコ車両減免となっています。廃車解体となりますので解体業者では 主要部品はたぶん中古パーツとして分解され海外輸出により第二の人生 外国で移植使用されていると思います。100系ハイエースは現在でも海外では人気がありAT車で10万円、MT車であれば20万円で下取りしてくれましたが廃車解体でしたので下取り価格は1000円でした。不具合箇所もなくOHCエンジンはタイミングチェーン仕様でしたので後しばらくは使用できたのですが !!

くだらない前置きはこのあたりで終了します。本題に入りますが時々脱線事故が発生します。安全作業をするつもりですが愛嬌とご理解ください。

修復作業計画及び目的

1) .作業内容としては 真空管アンプなどと違い電気回路以外に メカニズム動作および消耗品的な部品交換・修理作業が発生します。補修部品も調達できない場合も考慮して修復します。メカニズムのオーバーホール作業は必須となります。
(TEAC Xシリーズでは 使用している部品を含め動作も類似しています。修復、オーバーホールの参考としていただければ幸いです)

2) 録音機能についてはできうる限り修復するが 現在においては国内メーカーの生テープが販売終了していますので 新品を購入することができません。テストテープおよびリファレンステープが無い状態での修復作業となります。製造後30年以上経過したテープを選別しての修復作業をします。

現在でもTEACのサービス部門では 通信販売で輸入品の生テープを扱っているようです。旧BASF系列と思われます。ハブ巻きも扱っていました。ハブ巻きは空リールを手配しないといけない場合もあります。MTSではリーダーテープ、スプライシングテープ、オートリバースセンシング箔なども扱っているようです。現在入手が難しいアクセサリー類です。朗報としてメーカーサービスにてオーバーホール済みの中古デッキも扱っているようです。古物商の登録もされていました。高額修理代金のため所有者が所有権放棄したような機器の再生品と思います。機器が 水害、水没・落雷・落下破損など大きなダメージがない限り 修復に必要な部品と時間さえあれば完動品に近いデッキが供給可能と思います。オークションよりは一番安心して中古デッキが購入できる方法かもしれません。    http://www.mts-sv.co.jp/

3) 過去に録音されたテープなどが正常に再生可能であり デジタル音源変換をできるようにすることを目的とします。テープスピード誤差も測定し可能であれば調整。極力費用が発生しないように修復

上記記載内容での修復作業を開始しました。

修復前の各デッキ状態

X-10R その1(自己所有分)
長期間使用していないデッキであり 電源は入るがキャプスタンが回転しない。早送り、巻き戻しは動作する。メカニズムが正常動作しないため電気回路については不明の状態で修復開始。
X-10R 機能、仕様などは数多くの先輩方が説明されていますので省略させていただきます。

X-10R その2(ジャンク品)
電源は入るがキャプスタンが回転しない。早送り、巻き戻しは動作する。メカニズムが正常動作しない。予備機、自己所有デッキ修復のための比較機・部品取り機としてジャンク品で購入分です。長期間未使用での保管状態・環境に問題があります。多数箇所の不具合を解決するのに長時間格闘となりました。

X-10RMKⅡ その3(ジャンク品)
電源は入るがキャプスタンが回転しない。早送り、巻き戻しは動作する。メカニズムが正常動作しない。ジャンク品を購入したが販売業者不手際 梱包に問題が発生。到着時ヘッドカバー破損、リール台陥没のため輸送事故として返却する。内部点検と写真のみ撮影。ヘッドの摩耗状況は非常に悪く錆もあり凸凹摩耗状態を確認。以前の使用環境に問題ありと判断しました。ジャンク品購入はバクチです。詳細はオークションでは見抜くことができません。これらを踏まえて購入しなければなりません。当たりはずれがあります。多くははずれです。通常ジャンク品は返品ができませんが今回輸送事故扱いで返品となり不幸中の幸いでした。

X-10R その4(ジャンク品)
電源は入るがキャプスタンが回転しない。早送り、巻き戻しは動作する。メカニズムが正常動作しない。予備機、自己所有デッキ修復のための録音・再生基準レベル比較機としてジャンク品で購入分です。別ブログで修理・調整内容を記載しました。参考としてください。一番程度のよいデッキです。その他の項目については追記として  musenan09.blogspot.com を参照してください。                               
修復調整作業も同じ機種を修復しましたので修復時間短縮となりました。

GX280D-SS(自己所有分)
以前使用中に発煙故障があり仮修復しました。テープは何とか再生はできるが フロントL-chよび リアーR-chは 電源投入すると雑音が発生し VUメーターの -20dB目盛までランタムに雑音が発生。メカニズムは一応動作しておりテープ再生は可能な状態よりの修復開始。以前録音したテープで再生するとテープスピードが遅いと感じました。

TEACのサービス部門での修理体制としては理解しているつもりです。

中途半端な技術レベルの サービスエンジニア(チェンジニア)、屁理屈マニア ですと故障していない箇所の無秩序な部品交換、汚いハンダ付け、スイッチ接点不良のときなど 接点復活剤の乱用等で基板までべとべとにしている。調整箇所の半固定VR、トリマーコンデンサーなどをむやみに調整する。最悪は ねじロックしてある箇所、ヘッド調整ねじなどを むやみに触る。メカニズムの組み間違え、ワッシャー類の紛失、使用目的外の油脂の使用および注油量過多などで 修復作業時間が必要以上に増加するための処置と判断します。内部を点検しただけで修理したくない状態です。
 
又、人が作った故障箇所の発見には無駄な時間が消費され サービス技術者の 技術料が高額となります。自然故障とは異なり 人が作った故障(壊した故障)はなかなか見つけにくく 修復に時間がかかります。にもかかわらずユーザーは高額修理代だとクレームを付けます。

ゆえに メーカーでは内部を触らずに送付してほしいわけです。優秀なサービス担当者であれば 豊富な経験と技術力により 短時間で修復できます。トータルコストを見れば 時間単価が安価となるわけです。

上記は メーカーサービス部門からの内部事情と思いますが ?  どのように感じられますか ?  ユーザー側の思惑と メーカーサイドでの思惑にはギャップがあると思いますが ? ..... 中途半端な修理は 最悪です。修理屋ではなく どこかのハッタリ議員・せ・ん・せ・い と類似した人種 壊し屋 そのものです。


修理・調整に必要な時間を人件費換算するとおのずから技術料金は計算できると思います。自分の労働収入における 一時間あたり賃金を一度計算されたらいかがでしょうか?  その他諸経費、間接経費、事務処理費、運賃などが加算されて請求されます。企業は奉仕団体とは違います。会社として営利は必ず追求されます。


電気回路においても落雷事故の商品で無い限り消耗品以外では数多くの故障はありません。回路を追いながら測定機器を使用しますと アナログ回路であればおのずから不良箇所は限定できます。
マイコン制御の機器ですとほとんどが カスタムICを使っており 簡単に修復できません。又タイムチャートがないと故障原因の判別もできません。近代の機器は車と同じで資料なしでは素人修理困難な機器が大半です。

懐具合と相談し 腕に自身のない方は内部を分解せずにメーカーサービス依頼がベストです。

メカニズムオーバーホールに使用する油脂、溶剤、工具類の調達

メカニズムの分解修理に際しては メーカーのサービスマニュアルには記載されていますが 今回メーカーからのマニュアルが入手できない状態での準備となっています。
工具は一般汎用品を準備しました。雑材・特殊工具・治具については創意工夫をしてください。

上段左上 無水エチルアルコール500ml 瓶(試薬)
上段中央 スプレー・グリス
上段右上 タービンオイル又はスピンドル油

中段左  信越シリコングリス
・・の上   プラスチックシャシー用グリス
中段中央 TEAC ラバー用溶剤(水色)
中段右  TEAC ヘッド、走行系掃除用溶剤(赤色) 

下段上  竹箸加工 SVR調整ドライバー
下段下  竹箸加工先が細い棒

竹箸加工治具の必要性

SVRを調整するときには金属製ドライバーを使用して調整するとSVRを破損する恐れがあります。ガタのないように竹箸を削り使用します。竹は絶縁物であるためノイズの発生がありません。しかも絶縁物のため短絡事故が発生しません。又針先のように竹箸を削り メタル(軸受け)注油作業に使用します。過多注油とならないためです。注油量 ml を計測したことはありません。経験と感でしょうか ? 俗に言われる職人感覚と思います。言葉としては適宜の注油です。

通常メーカーからのサービス技術資料では使用される特殊溶剤、油脂類などは製造メーカーの品種および品番が記載されています。同じく調整用測定器類、調整用テストテープおよび録音再生用リファレンステープの種類、調整値、特殊工具などは記載されていますが 今回サービスマニュアル等が入手できていませんので 個人的見解により調達および修復調整をしました。
工具等は汎用工具を使用し回路図については現物基板より回路図をおこして修復します。何度も現物確認をする作業において デジカメでプリント基板を裏表撮影し PCで拡大画面を見ながら配線図とブロック図を作成しました。気の遠くなる作業です。ブロック図で大まかな信号の流れを確認、動作を把握します。
テープパス確認・調整用に歯科ミラーが重宝します。

普及品カセットデッキが主流の時代になると 強化プラスチック構造のシャーシーが登場します。リンク機構部は金属ですが 黒色の二硫化モリブデン含有グリスが数多く使用されます。潤滑剤としての性能は良いが手に付着すると なかなか手洗いをしても落ちないグリスです。その後製造工程では 女工さんなどのクレームにより 安価な他の白っぽいグリスに品種が変わりました。

X-10R メカニズムの点検および修理


よく紛失する各種Eワッシャー
メカニズムについては数十年まともな動作をしていませんので油切れによる不具合は必ずといってよいほど発生しています。各ソレノイドコイル(電磁プランジャー)で動作しています リンク機構のシャフトグリスが固化しておりメカニズムがスムーズな動きができていない状態です。

リンク機構を分解時に犯すミスとしては各所に 抜け止め用Eワッシャーポリワッシャー(ポリスライドワッシャー)を紛失します。又元に組み立てる場合の挿入位置も間違って組み立てるミスがありますので 取り付け位置、種類などを細かく記録すること忘れないでください。現在はデジカメなどでマクロ撮影されるのも1つの手法です。
フライホイール軸受け
分解しましたら古いグリスなどはきれいにウエスなどを使って除去してください。その後新しいグリスを適量注油します。

左の写真はフライホイルを分解した図です。フライホイルの軸受けにはスピンドル油を竹箸加工治具を使い適宜注油します。写真の左から黒いワッシャーは油止めリングです。組み立て途中で挿入します。キャプスタン軸からの油が走行するテープに伝わらないようにするワッシャーです。デッキを水平で使用したときには テープカスが軸受け部に進入するのを防止するワッシャーです。
フライホイール及びキャプスタン軸
その奥の黒色ワッシャーは軸受け部との接触面の磨耗防止用ポリスライドワッシャーですので特に紛失に注意してください。フライホイルのスラスト調整用ねじは後部鉄板にありますが スラストガタ、回転が重い症状意外は調整する必要はありません。ほとんど調整作業は発生しません。後部フライホイルシャフトとスラスト調整ねじのプレート間には少量のグリスを注油してください。


モーターの左側のねじがキャプスタン軸スラスト調整
今回修復した機器では回転部軸受けにベアリングが採用されていません。業務用機器などであれば軸受け部にはベアリングが採用され非常に回転は滑らかです。今回修復した機器ではメタル仕様となっています。軸受け部の油が劣化するとメタルの焼き付き事故が発生します。業務用機器とは異なり過酷な動作はないと思いますが 回転部については定期的に分解注油作業を実施しないと故障原因となります。家庭用VTRでも高速回転するヘッドモーターなどの軸受けはベアリングが採用されています。又スラストがたもなく回転は非常に滑らかです。テープガイド金具は金属の棒であり金属がテープ走行により摩耗しテープ走行における摩擦による影響も増加します。業務用機器と違いベアリングを軸受けとしたガイドローラー等は採用されていません。
業務用機器では定期的にオーバーホールを実施します。汎用ベアリングなどの消耗部品は定期的に交換します。そのため定期的な軸受け分解注油作業は発生しません。
ピンチローラー・ガイドローラー・テンションローラー
今回の故障ではキャプスタンベルトが経年変化によりベルトが溶解しフライホイル、キャプスタンモータープリーにべとべとに付着していました。無水アルコール・石油系溶剤を使い残留物が完全になくなるまで清掃しなければなりません。デッキが垂直状態で長期保管してあったため キャプスタンモーター軸受け部には溶解したゴムは流入しておらず 軸受けの注油のみで復旧できています。もしも水平状態で保管してあった場合はキャプスタンモーターの交換になったかも知れません。今回TEACサービス部門様のご好意により キャプスタンベルトは入手ができました。

ガイドローラーにあるリバースセンサーブラシ
ベルトなどのゴム製品は経年劣化があります。今回のベルトのように溶解するベルトとひび割れがして切断となる症状があります。予備品を保管する場合空気中の水分が大敵です。シリカゲルなどを袋の中にい入れて紫外線からも保護し茶色のポリ袋で密封保管されることをお勧めします。

交換が完了したキャプスタンベルト
フライホイルは取り付けられる場所によりフライホイルの形状が異なっています。再組み立てをするときには注意して組み立てませんと ヘッドにテープが圧接することができません。ベルトが接触するフライホイルの位置が FWD PLAY   REV PLAY 動作状態によりキャプスタン回転数が微妙に違う設計となっています。キャプスタンモーターもフライホイルシャフトと同軸角度ではありません。平ワッシャーによりモーターシャフト角度がずれています。フライホイルには段のついた箇所があり左右のフライホイルで段の位置が異なっていますので注意してください。微妙なテープ送りスピード違いによりテープをヘッド面に接触するようにテープテンションが設計されています。ナカミチのカセットデッキの FWD,REV  PLAY ベルト張力差によるテンションのかけ方との違いがあります。フライホイルの溝に異物が入り込むとテープテンションが崩れてしまいます。

キャプスタンベルトの取りつけ方法は諸先輩が説明をされていますので それらを参照願います。モータープーリーに対して逆M型に取り付けします。組み立てには注意が必要です。

ピンチローラー駆動部のグリス劣化
手がメカニズム部に入れることができません。組み立てる場合にベルトをキャプスタンモータープーリーに装着できるように工夫して 正規位置に取り付けます。創意工夫をしてください。フロントパネルからヘッドブロック・フライホイール部全体を脱着しての作業がベストです。その場合はシステムコントロール基板はシャーシー上部に仮固定できます。配線の結束バンドは切断します。完成後結束バンドなどを利用して再結束してください。

リンク機構での油切れ箇所はピンチローラー圧接用リンク機構シャフトの油切れが確認できました。電磁プランジャーからの動力伝達において一番大きな力が必要な箇所です。そのリンク機構はCUE操作レバーとも同期して動作しており F-FWD(→・→)  F-RWD(←・←) 動作時にはキュルキュル音が発生し テープがヘッドに接触した状態でした。

キュー駆動・ピンチローラー圧雪スライド金具グリス劣化
安価な2ヘッド方式のデッキですと各ヘッドに録音、再生時にはテープパッド(フエルト)がテープをヘッドに圧接する構造ですのでバックテンションにはあまりクリチカルに調整の必要はありませんが テープパッドのないデッキでは バックテンションが重要な要素となります。

ピンチローラー圧接時の隙間 0.5~1.0mmの確認
3モーターデッキにおいてはテイクアップリールモーター(巻き取り側)は常時反時計方向に回転しており 動作モードによりモータートルクを変化させて動作します。サプライリールモーター(供給側)は常時時計方向に回転する構造です。又電磁プランジャーでブレーキ機構の動作を制御しており よほどの痛みがない限り調整することはないと思います。バンドブレーキの目視点検および リンク機構の分解注油は実施してください。リールの回転具合、ブレーキの作動具合をテープのたるみが発生しないかなどを目視点検してください。

Xシリーズではリールモーター回転速度をマグネットとホール素子による 磁気センサーにより検出しています。そのため機械的ブレーキの作動は電子回路により制御します。Aシリーズのようにブレーキ機構部の摩耗頻度は少なくなっています。動作モードを切り替えの時には 電子回路システムコントロールが自動的に各所の動作タイミングをコントロールしています。

ダイレクトドライブ直流駆動リールモーター
(悪友はAシリーズ、DENONのデッキDH-710Sではテープの早送り、巻き戻し動作から停止の場合は逆の操作をしてリール回転数が低下してから停止操作を常時していました。ブレーキ摩耗防止策のようでした)

TEAC Aシリーズのデッキでは主にACモーター、リレーシーケンス制御でしたが Xシリーズにおいては電子制御方式となっており 多種類のセンサーで各メカニズムのタイミングを制御しています。各モーターも直流モーター仕様であり モータートルク調整は AシリーズのACモーター、ドロップ抵抗による動作電圧可変トルク調整ではなく 電子システムコントロール回路で 直流電圧により制御をしています。トルク調整箇所はありません。X-10Rは左右対称に駆動していますのでテイクアップ側・サプライ側は同じ構造です。テープ走行方向だけが違い 各モードでのリールモータートルクを変化させて動作する構造です。

左右 テンションアームローラー、インピーダンス(ガイド)ローラー、ピンチローラーも常時回転している場所です。サービスマニュアルでは1000時間ごとに分解注油が推奨されています。軸受けの分解・清掃・注油作業が必要です。特にポリスライドワッシャーの紛失には注意してください。メタルの磨耗、テープ巻き取り不具合が発生します。注油はスピンドル油を適宜注油してください。又テープ走行に狂いがあってはなりません。

ねじロックのしてありました箇所についてはねじロックペイント塗布してください。

一応テープを装着せずに通電し テンションアームのパネルにある隙間にティシュペーパー等を挿入してメカニズムが動く状態にします。各モード滑らかに動作確認作業後テープを装着し問題がなければ電気回路。レベル測定の工程に進みます。

技術資料にはピンチローラー圧力の測定、リールモーター巻き取り力測定など バネ計、トルクメーターを使って測定します。資料には普通数値が記入されていますが 今回資料が入手できていない事も含め 大きな狂い発生個所は無いと判断。小生の感覚で良否判定としました。

上位機種の X-1000R ではシステムコントロール基板にある半固定抵抗でリールモーター巻取りトルク調整は可能です。
A シリーズ 大半のデッキでは セメント抵抗、巻線ホーロー抵抗にあるタップ位置によりACリールモーターに加わる電圧を可変してトルク調整します。

 時々回転ムラ で悩みました。予備機・部品取りとして今回新たに購入したデッキでの症状です。50ミクロン厚さのテープでテープ終端付近で時々発生するメカニズム不具合による症状です。時々症状のため原因をつかむのに苦労しました。元々キャプスタンモーターが回転ムラ症状で修復したデッキです。キャプスタンモーター回転ムラ症状でのIC不良は詳しく後で記載しています。

原因はポーズソレノイド・電磁プランジャーの吸引不足による故障です。左右のピンチローラーはキャプスタンプランジャーとポーズプランジャー並列動作による駆動方式です。一番大きな力が必要なポーズプランジャーが最後まで吸引できず途中で時々止まるのが原因でした。システムコントロール基板のトランジスター、ダイオード、電解コンデンサーなどを点検交換してみましたが改善できません。ソレノイドコイルに流れる電流が少ないために吸引不良症状と判断したからです。再度ヘッドブロックを脱着して分解オーバーホールしたメカニズムを点検しましたがスムーズな動きです。不具合時よく観察するとピンチローラー圧力が弱くなりリールモーターによるバックテンションで回転ムラ状態が確認できました。電気回路も異常なく正規の技術資料がないため詳細は解りません。メカニズムを詳しく点検するとプランジャーの取り付け位置が各4個の取り付けねじで調整できることが判明しました。電源トランスを取り外すことによりプランジャー取り付け位置が可変できます。シャーシーねじ穴は取り付け位置が可変できるような構造です。位置調整はシャーシー上部に M4 緩み止めナットで調整できます。最終的に1mmほど二つのプランジャーをヘッドブロック側にずらしました。その結果プランジャー・シャフトが最終端まで吸引されるようになり正常な圧力でピンチローラーがキャプスタンに接触するようになりました。ピンチローラーが正常な力でキャプスタンに接触しないための時々症状です。当初よりのプランジャー取り付け位置調整の不具合と思います。最終的にはピンチローラーが圧接時 0.5~1.0mm (ゴムとピンの隙間)ほどコイルスプリングのプレートと隙間がないと正常なピンチローラー圧力となりません。写真の状態です。隙間ができることから コイルスプリングにより正規のピンチローラー圧力が発生します。手動でプランジャー駆動金具を動かすには非常に大きな力が必要です。そのため大きなプランジャーが採用されています。プランジャー駆動シャフト(可動鉄心)は最後まで吸引しないと大きな力を保持することができません。使用される場所により微妙な調整が必要です。

X-1000R 英文マニュアルでは ポーズ時ピンチローラーとキャプスタンの隙間は 0.5~1.0mm  ピンチローラー圧力は 1.35~1.9Kg 写真記載したゴムとシャフトとの隙間は 約1mm と記載されていました。上記規格となるように各ソレノイドのストローク調整・プランジャーの取り付け位置調整'します。通常一度調整すればずれることが少なく 故障としては発生しにくい個所です。
上記の調整、確認には隙間ゲージ、ノギス、バネ秤がが必要となります。

テープパス点検 (テープ走行系点検)

各ヘッド調整ねじはねじロックペイントが塗布されている
テープパスはデッキの性能を左右します。通常ヘッド交換以外は触ってはならない箇所です。おまけに調整ねじがねじロックしてあります。走行系は職人技で調整する箇所ですので測定器もなく 素人修理はできません。走行調整は言葉では詳し説明することができません。ヘッド調整作業はテープを走行させながら目視で調整します。同時に測定器で計測しながら作業をします。(ヘッドアジマス、位相、クロストーク、消去率など) テープガイド金具は固定されており調整はできません。VTRのビデオヘッド走行調整のようにオシロスコープを使いエンベロープ波形をモニターしながら クリチカルな調整はありませんが 間違った調整ではテープエッジをいためます。周波数特性も悪くなりますので 歯科ミラーを使いテープエッジに無理な力がかかっていないかを目視点検します。長期間使用するとヘッドが磨耗し レベル変動の原因ともなります。このような状態で もしもヘッド調整ねじをいじると ヘッドのテープ接触面段付磨耗部が かみそりの刃のようになり テープをいためる原因となります。テープエッジから粉・細い針のようなテープカスの剥離が発生します。又キャプスタン軸も汚れやすくなります。精密に調整している箇所ですので闇雲に調整しないでください。

パーマロイ・ヘッド摩耗の程度についてはある程度目視で判断できます。磁気テープは主にポリエステルフィルムテープに磁性体である酸化鉄の微粒子をテープに接着している状態といえます。この磁性体は研磨に使われる紙やすりの特性に似通っています。テープが走行するとヘッド接触面・テープガイド金具が研磨される状態となり ヘッド摩耗が進行します。たちの悪い摩耗状態としては摩耗している金属部が凸凹摩耗状態であればレベル・特性変化が大きくなっていると思います。粗悪なテープ使用、数多くテープパスメンテナンスを実施していないデッキでの症状です。均等に平坦に摩耗した場合は特性変化は少なくなります。
摩耗状態が進行すると レベル低下、周波数特性の劣化症状となります。再生側レベル・周波数特性悪化よりも 録音側での色々な状態悪化が顕著に表れます。
ヘッド摩耗が進行すると 録音・再生状態で チャンネル間でのレベルが違う、全体に再生レベルが低い、高域が出ていない、歪が多い などの症状であり ヘッド汚れに似通った症状が確認できます。
凸凹にヘッドギャップ部分が摩耗したヘッドの場合 ヘッドパッドのついたデッキのほうがレベル変動は少なくなります。テープの厚みが薄いほど凸凹摩耗となりやすく テープパッドのないデッキではバックテンションでヘッド面に圧接します。腰の強いテープ100番タイプを多用するとテープ摩耗面は凸凹の摩耗面とはなりにくく 均等に摩耗するため摩耗面はフラットとなります。その結果長時間使用してもレベル変動が少ないように思います。プロユースのテープでは50ミクロン厚100番タイプのテープが多用されました。民生用ではやはり長時間録音が有利となり 35ミクロン厚150番タイプのテープが多用されています。

録音・再生ヘッドは高額な消耗部品です。しかも測定機器・テストテープ類・交換調整技術がない場合 素人交換・調整は不可能です。壊し屋となってしまいます。ご注意を ! ! ! ! !

道楽作業における凡人解釈による記述 参考程度とご理解ください。ヘッド交換・調整の手順ですが オープンリールデッキでの汎用的な調整方法です。メーカー発行のサービスマニュアルが入手できていないことを含め 間違った調整方法かもしれません。ご了承ください。

通常 荒調整は生テープを使って ある程度のレベルまで調整します。今回の例としてヘッド交換作業の場合はFWD側録音ヘッド(RH)・再生ヘッド(PH)とREV側の録音ヘッド・再生ヘッドを交換しませんと調整は困難になると思います。特定ヘッド交換ですと交換しないヘッドの段付き摩耗部が調整を困難にしている理由です。業務用機器ではオーバーホールの時には高額なヘッドでは 摩耗頻度が少ない場合はヘッドのテープ接触面を再研磨したのち再調整をします。目視でヘッド位置、高さ、仰角などをテープ走行させながら荒調整します。テープガイド金具も摩耗していると思いますので取り付けねじを緩め120°~180°軸を回転させて新しい接触面とします。消去ヘッド(EH)についてはあまり交換する必要はないと思います。後期の機種では消去ヘッドは摩耗しにくいフェライトヘッドに代わっています。同時に各テープガイド金具でのテープ走行において テープエッジに無理な力がかかってテープが湾曲していないかを注意深く目視点検します。仰角が適正な調整をしていないとテープエッジに偏った力が発生します。ヘッドトラック位置は技術資料に寸法が明記されておりますのでテープエッジからの寸法をヘッド調整ネジで合わせます。同時に全体のテープパスも確認します。作業の90%までぐらいは生テープです。テストテープは高額であり最終調整時のみ短時間で微調整に使用します。間違って消去したりテープがクラッシュした場合でも 通常のテープであれば高額な損害とはなりません。それだけ テストテープは基準ですので大切に扱います。製造工程ではテープの使った回数、定期的な校正をして品質管理しています。そのため副標準テープを作成し最終調整の手前まで副標準テープで調整します。以前は副標準テープを作製し所有しておりましたが 現在見つかりません。

テストテープを使い再生ヘッドのヘッドアジマスを調整した後 再生系特性・レベル調整をします。その時点ではVUメーター、ライン出力電圧も調整します。再生側が正常な状態になれば録音しても良いリファレンステープに交換します。作業前にはバイアストラップ調整、録音ヘッドでのバイアス電圧を仮調整します。録音ヘッドアジマス調整は 10KHzまたは8KHzの正弦波信号を録音し そのの状態で゛再生されたアジマス調整用信号をオシロスコープ・ミリバルを使って測定しながら 録音ヘッドアジマス調整をします。録音 特性・レベル調整は引き続きリファレンステープを使ってCRジェネレーターからの信号をATTを使用して 指定された周波数およびレベル調整された基準信号を録音し 再生ヘッドからの信号により 録音レベル、録音バイアス、録音EQ調整を測定器で計測しながら デッキの特性・標準レベルに調整します。2ヘッドの録音調整は厄介で 録音と再生を繰り返し調整します。これらの電気的調整をしながら最終の走行系のテープパスも注意深く点検調整します。ヘッド部分の総合調整です。これらの調整で最終特性が確定します。調整に使われるテープは数種類存在します。目的別テープでの調整です。
工場生産ラインでの調整は各調整箇所の各SVRなどは調整前に大まかな位置に仮設定しますが 同一ロットであれば最終完成状態に近い位置に仮調整します。調整作業は微調整程度で完成します。しかしアフターサービスでは最初からの調整となりますので 製造ラインの調整時間より時間がかかります。素人が調整したような機器の修理では 調整時間も必要以上にかかり 手数も多くなります。出荷後内部を触られていない場合故障個所は別として 優秀な技術者であれば短時間の微調整で作業は完了します。
メーカーでは回路設計の段階で不安定な回路設計はしません。部品単体のばらつきによる特性調整程度であり 一度調整すれば ほとんど大きなずれは発生しません。経年変化による微調整で済むはずです。にわかサービスマン・屁理屈マニアは知ったかぶりで無闇に調整個所を触ります。機器の動作原理も判らないまま無茶苦茶にしてしまいます。一番たちの悪い壊し屋です

ヘッド調整作業は測定機器類、テストテープ、リファレンステープ、数種類のテープなどを使用して メーカー品質管理の特性・調整・規格数値表(チェックシート)にしたがって作業を進めます。
ゆえに何も用意のできない 素人調整はできません

録音バイアス調整について 

このデッキでは ユーザーレベルで細かく調整することが出来ません。バイアスは2段階切替です。厳密に申せばテープの種類により録音再生レベル、周波数特性は異なります。そのためにフラットな周波数特性は メーカー推奨のリファレンステープで調整してあり 特性の異なるテープでは録音時・再生時のテクニックに頼るしかありません。バイアス調整は歪率、高域周波数特性に影響があります。再生周波数特性は録音時の2段階切り替え REC EQ スイッチもしくは アンプのトーンコントロール回路で調整します。バイアスが高い(深い)場合は大きな音が歪にくくなりますが 高域のレベルが低下します。又バイアスが低い(浅い)場合は高域が上昇しますが大きな音は歪が多くなります。REC BIAS 1では約 89V/rms 100KHz の電圧が発振ユニットから出力されています。 2では 70V/rms の数値であり 2 が浅いバイアスモードとなります。同じテープであってもバイアス電圧の違いにより記録される信号の大きさは数dB変化し歪率も変わります。通常サービスマニュアルでは録音ヘッドでの100KHz前後の高い周波数の電圧は記載されません。測定ケーブルによる分布容量が バイアスによる動作点を変化させてしまいます。そのためバイアス電圧は記載されませんので 録音ヘッドの信号を測定する場合 録音ヘッドのアース側に1~10Ωの抵抗を挿入し抵抗で発生した信号を測定します。測定器接続による影響を少なくするためです。小生は測定器接続による影響が少なくなるように オシロスコープのプローブを使い目安として活用しています。

参考値程度とご理解ください。目安です。予備機として購入したデッキでの バイアストラップ・バイアス波形(100KHz)の電圧を記載します。(録音ヘッドでのバイアス電圧)
REC BIAS 1  FWD L-ch 16.2V/rms  R-ch  15.3V/rms   REV  L-ch  15.6/V/rms  R-ch  17V/rms
REC BIAS 2  FWD L-ch 12.8V/rms  R-ch  12.0V/rms   REV  L-ch  12.0/V/rms  R-ch  13V/rms

バイアス・イコライザー セレクトスィッチ
ヘッド単体特性ばらつき、測定機器などの条件が異なる場合は この数値は異なると思います。参考程度の数値と解釈ください。(LMV-87Aミリバル オシロスコープ用BNC接栓測定プローブ 1.4mで測定)
通常のシールド線・同軸ケーブルなどの測定ケーブルではケーブル分布容量などの影響により測定誤差が発生します。測定機器接続での誤差を少なくするため オシロスコープ用プローブを使い1/10に減衰するモードでの測定をします。入力感度は悪くなりますが 測定プローブ接続による影響を最小限にすることができます。バイアス調整用は80PFのトリマーコンデンサーを使っての調整ですので 測定に際しては注意が必要です。測定ケーブルの分布容量が影響し動作状態が変わってしまいます。
10対1のオシロスコープ・プローブを使って測定した場合には ミリバルなどに付属している同軸ケーブル3C-2V測定ケーブルに比較して測定ケーブル接続による分布容量影響が少ないため高い目の電圧を観測します。又バイアス動作点は大きく変化しません。
今回小生所有のX-10Rにおいて 手持ちのテープの中で初代デッキ用ですが 使用頻度の少ない SLH 370-BL をリファレンステープと仮定しました。 ピークバイアス電圧の -3.5dB をオーバーバイアス調整値として設定した場合 目安の参考値を記載します。 (調整方法は X-1000R 英文サービスマニュアルに記載されたバイアス調整項目を実施) DUAD 7-550-BLのテープも保管していましたが今回テープ鳴きが発生しているため使用できません。バイアスは深く高出力で特性は良いのですが参考程度の使用となりました。バイアス調整は手持生テープの種類を変えての試行錯誤です。

SLH 370-BLでは FWD 12.5v,12.0V  REV 12.3V,13.0V を 観測。  (10対1 オシロスコープ用プローブを使いミリバルで測定) バイアス調整を触られていなデッキと比較すると低めの電圧です。リファレンステープの種類により測定される電圧は異なります。このテープはバイアスが浅く TEACのリファレンステープに類似していないと後日判明しました。

生テープの種類によりピークバイアス電圧は変化します。同じ品種のテープでも製造時期により数dB変化します。ヘッドのバラツキ、摩耗頻度によりこの小生所有デッキではFWD,REV 録音時には 2dB  ほどの再生レベル差が確認できました。高性能テープではオーバーレベル録音しても歪は増加しません。テープ磁性体の種類によりテープに記録される磁気信号の磁気飽和レベルが違うからです。

ピークバイアスとは

磁気テープに記録されるN,S磁力強さをアナログ的に音声信号に応じ 残留磁束として記録されます。通常交流バイアスと呼ばれる正弦波を使い ヒステリシスループで発生する歪特性をうまく変化させ 歪を少なく記録するための交流信号です。このバイアス信号の大きさにより記録される N,S 小磁石の磁力線密度が一番高くなるバイアス信号レベルが存在します。(詳しい理論などについては教本などを参照してください)
これを探るためにバイアス電圧を可変して再生される基準高域信号レベルが最大となる場所があります。これがピークバイアス電圧です。この電圧よりもさらにバイアスを深めて ピーク電圧で測定した電圧と比較して -3.5dB になった場所が 最適バイアス電圧となります。これが通称オーバーバイアスと呼ばれています。(大きな信号の歪が少なく 再生ヘッドから再生される電圧が大きく高域特性の良い最適動作点)
最適動作点は生テープの種類、特性により異なります。製造メーカーでは指定されたリファレンステープで調整します。

失敗からの注意事項

上記のような作業前には現状の状態を詳しく測定し記録することをお勧めします。間違った調整をした場合など元の状態に戻す時に資料となります。小生所有のデッキでは詳細を記録せずに調整したため元に戻すことができませんでした。今回測定値を比較するために程度のよい予備機を購入しました。上記予備機でのDATA値は約30年経過しておりますがメーカー出荷時調整値と解釈しております。経年変化により多少の誤差はあると思いますが もしもほかの個所においても調整する場合は必ず現状のデーターを取るように心がけてください。
測定に必要な測定機類、テストテープ類、調整値、基準レベル周波数・値などはサービスマニュアルに詳細が記載されています。しかし基本的な事柄が理解されていないと 記載事項の作業内容が理解できません。間違った調整となることがあります。

記載事項が準備できない場合 調整作業は困難です。ご注意を ! ! ! !

テープデッキでのEQ特性はNABで定められた特性であり EQ素子の時定数はテープスピードにより異なります。レコードのRIAA特性と同様に フラットな特性ではありません。録音、再生で周波数特性はフラットな特性となります。テープデッキでは録音EQ、逆特性の再生EQ回路が存在します。

録音・再生イコライザーの時定数

LHポジション  19cm/s   3,180μsec + 50μsec (NAB)
LHポジション  9.5cm/s   3,180μsec + 90μsec (NAB)
EEポジション  19cm/s   3,180μsec + 35μsec
EEポジション  9.5cm/s   3,180μsec + 50μsec

上記のイコライザーの時定数で周波数特性を調整します。時間単位で表示されていますがこれを周波数で記載すると
低域t2は  3.180μsec ですから f = 1/t の公式により 314Hz
高域t1は  50μsec (NAB), 90μsec (NAB), 35μsec,50μsec を周波数で表すと 20KHz,11KHz,28KHz,20KHz と判明します。

EEテープでは高域特性及び歪率・出力レベルなども改善されており EQ特性は LH 19cm/sec と EE 9.5cm/sec は同じイコライザーであることが判明します。以上の事柄によりテープスピードとテープ種類により 特に高域の特性が違っています。これらの機能がない場合はアンプ側のトーンコントロールなどで調整するわけです。LHポジションでEEテープ(高性能テープ)を録音した場合は高域が上昇します。
EEテープ使用の時には19cm/secのテープスピードでも 38cm/sec に匹敵するとも言われています。このX-10Rでは EEポジションは設計されていません。改良機 X-10RmkⅡは写真のごとくEEテープポジションとして搭載されています。

参考としてカセットテープデッキの場合は
カセットテープでは4.8cm/sとテープスピードが遅いためノーマルテープ、高性能テープで種類により高域時定数を変えます。
カセットテープ ノーマル 3,180μsec +120μsec クローム/ハイポジション・メタルテープ 3,180μsec + 70μsec のイコライザー特性です。高域の周波数を計算すると 8.333KHz, 14.28KHz となります。高級なカセットデッキでも上限の高域は15KHz前後の周波数特性です。又バイアス発振周波数もオープンテープデッキより低く 60K~80KHz 程度であり機種により異なります。 カセットテープのケースには誤消去防止用の開口部以外にイコライザー切り替え用とメタルテープ用バイアス切り替えの開口部があります。テープの種類によりデッキが自動判別する仕組みです。オープンリールテープであれば自動的でなく 使用する人間がバイアス、イコライザーの切り替えをテープの種類に合わせてセットしなければなりません。

現在ではそのカセットテープも衰退しメモリーICカードなどを使った小型デジタル機器が主流の時代となりました。

X-10RmkⅡ テープセレクター
X-10RではREC EQ スイッチは録音時のみ動作します。高性能テープですと スタンダードテープと比較すると出力電圧が数dB大きくなり高域が上昇傾向となります。そのため録音時に高域を抑えるための REC EQ が スイッチ 2のモードで 高域を低下させ補正します。再生モードでは補正はできません。ゆえに細かな調整はアンプ側トーンコントロール回路などで補正します。
上記の理由により高性能テープを使いバイアスは高め オーバーバイアスとして大きな音の歪率が良好となり 高域はローノイズ・ハイアウトプットテープでの性能向上により ほぼフラットとなります。このような録音テクニックが S/N比・Dレンジの改善策として当時のアナログ録音手法でした。

オープテープデッキはカセットデッキに押されて販売数が減少しましたが カセットテープの生テープにおいて様々な高性能テープが開発されました。同様にオープンテープも高性能になりました。X-10RmkⅡ においては従来のスタンダードポジションテープから高性能テープ、EEポジションテープが販売された対応策として バイアス・EQがスィッチで選択できるようになりました。プリアンプ側での特性調整をしなくてよいようにです。X-10RmkⅡにおいてはアンプ基板は新しく設計されており トランジスターによるEQセレクト回路も採用されました。補正回路である時定数を細かく調整します。同じくバイアス電圧もセレクトされます。後期のデッキではシステムコントロールの制御は家庭用VTRと同じように 4bitカスタムマイコンで制御するようになり 多接点スライドスイッチは減少しました。(X-1000Rなど以降に製造されたデッキ)

バイアス調整はリファレンステープを使って各周波数ポイントを録音し周波数特性、再生レベルをバイアス発振回路にあるトリマーコンデンサー、EQ SVR、録音レベルなどを調整します。録音信号と再生された信号をレベル比較し調整します。今回リファレンステープの種類が不明であり ほとんど録音することがないため調整は実施していません。自己所有生テープで録音テストをしましたが 多少レベル差が確認できますが 実用レベルであり 問題なく録音動作しています。

古くからリファレンステープとして使用された Scotch 111
デッキ製造メーカーにより調整方法は多少異なりますが リファレンステープを使いAKAIの場合 1000Hz,10KHz -20dB の信号を録音し 再生された信号の大きさが同じ もしくは若干数dB高めとなるように録音バイアスでの特性を調整します。そのためスタンダードレンジ(Scotch 111)以外に高性能のテープ用としてバイアスを調整する機種もあります。
デッキ製造メーカー,機種により リファレンステープ製造メーカー及び品番が異なります。記載されているテープ種は一般には市販されていない品番もありました。現在では技術資料に記載されている新品のリファレンステープ入手は困難であると思います。

リファレンステープの種類については技術資料が無いため小生の憶測です。X-10R 発売された時代ではScotch 111は一般市販では入手が困難であり Scotch 150,1500 かもしれません。発売当時入手できる調整用生テープの種類は技術資料には記載されていると思います。小生が現在数多く所有しているテープは Scotch177,207,212,218,JMT3100 などが大半です。他にはTDK,SONY,マクセルなどを所有しており どのテープでもってリファレンステープとするか悩んでいます。

TEACの場合基準再生レベル調整は400Hz 0dBの信号が記録されたテストテープで調整します。 dbxユニットのデコード出力レベル、VUメーター0VU、ライン出力レベル調整です。テストテープには記録されている信号の磁束密度 200nWb/m又は250nWb/mなどの基準数値が記載されている場合もあります。テストテープがないと再生系は正確な数値になりません。正確に調整されていませんと次工程の録音系調整作業ができません。又リファレンステープで録音再生された信号により レベル、周波数特性も調整します。録音周波数特性は 40Hz~16KHz スイープ又は数か所のスポット信号 -10~-20dB の信号を録音。再生された信号レベルで周波数特性の確認です。再生された信号が機種により異なりますが±3dB以内の数値であることを確認します。
調整作業手順としては再生系から順にヘッド・アンプ特性・出力Gainの調整をします。その後録音系のバイアス、周波数特性、REC Gain 調整などを調整します。

AKAI,GX280D-SSの場合は技術資料では 0VU の再生出力値は BTS規格のVUメーター値と同じで+4dBm(1.228V) 250Hzテストテープ再生時と記載してありました。リファレンステープについては Scotch 111 を使用しての 録音・再生レベルおよび周波数特性バイアス調整をします。周波数特性チェックには AKAI 100F(富士フィルム F) のテープを使用して調整と記載されていました。

デッキの交流バイアス発振回路での発振周波数が判明すればデッキのほぼ周波数特性が確認できます。バイアス発振周波数の1/5の周波数がその数値となりGX280D-SS技術資料では100KHz~110KHzと明記されています。高域は20KHzが上限と判断できます。テープスピードを落として再生した場合バイアス発振波形の正弦波がテープに記録されており小さな音としての連続音が確認できます。X-10Rではバイアス発振ユニットには 100KHz と記載。

参考記載


TEAC X-10R 1979年発売当初に販売されていた生テープ種類による EQ,BIAS設定 (取説より引用)

REC BIAS  sw 1      REC EQ  sw 1

DENON DXシリーズ、 FUJI FB-151   MAXELL UD35,UDXL35,LNnew35、  Scotch 1500、  SONY DUAD,SLH,ULH、 TDK Lシリーズ(AUDUA)

REC BIAS  sw 1      REC EQ  sw 2

AMPEX 407、  FUJI FG-150、  Scotch 207,218、

REC BIAS  sw 2      REC EQ  sw 1

BASF LP-35LH,LP-35LHS,LPR-35LH、  Scotch 212,177

REC BIAS  sw 2      REC EQ  sw 2

FIJI FM、  TDK Tシリーズ

上記が取扱説明書に記載された テープ種類による推奨スイッチポジション。残念ながら以前から各社採用していましたリファレンステープ Scotch111  表に記載されていません。

1970年前後から10年ほどの期間では 生テープの性能は大きく変化し高性能となり各テープ製造メーカーからは多数種の音楽用生テープとして販売されています。それと同時期には操作が簡単なカセットテープレコーダーが主力商品となり販売数が増加しました。1980年前後 X-10R発売時の主力商品はテープ操作が簡単な各社ドルビー内臓カセットステレオテープデッキです。有名な Nakamichi 1000,700,DRAGON がロングセラー高級カセットデッキでした。
 
以上の表記から推察するとTEACではリファレンステープはローノイズ・ハイアウトプットテープで調整していると推察できます。高性能テープではダイナミックレンジが広く高域が上昇傾向となりますので バイアス信号が深いモードで良好な特性となります。たぶん Scotch111 では BIAS-2,EQ-1 のモードでの使用がベストと自己判断しました。X-10Rが製造されていた時代では数多く購入できた音楽録音用生テープでは BIAS-1,EQ-1 のスイッチモードで動作できる環境と思います。

X-10Rではテープの種類による細かなバイアス調整はできません。新規録音作業の場合小生は再生モニターのVUメーターを監視しながら通常録音作業をしていました、VUメーターの針が目盛の最大値を表示しても大きな歪として小生の耳では判断できません。生テープの種類により同じ録音レベルで録音をしましても再生される信号レベルは±数dB変化します。このことから再生されるレベルで通常録音レベルを決定していました。再生レベルはVUメーター 0VU を基準としています。400Hz正弦波によるキャリブレーション作業です。テスト録音ではオーバーレベル録音をして各テープの磁気飽和レベルを探ります。テープの種類により再生されるレベルは異なります。録音する場合は必ずテスト録音をしてテープ種類による録音レベルを把握していました。このことからdbxなどのノイズ軽減装置は録音されるレベルと再生レベルが同じでないと圧縮・伸張特性が変化する欠点があります。小生は好んでdbxのようなノイズ軽減装置は使用していません。後は個人の好みもありアンプ側で聴感特性を調整します。
オーバー録音時の歪については聴感だけでなく キャリブレーション信号録音で再生された信号を自動歪率計(MAK-6571A)などを使えば簡単に数値として確認することができます。3%以内のTHDであれば大きな耳触りとして小生は判別できません。小生の感覚としてTHD 3%を磁気飽和レベルと 自己判断しています。念のため1000Hz,400Hzの信号で確認作業をします。修復しましたデッキではVUメーター0dBでの録音・再生信号は0.4%の歪率を観測しました。この作業をするとテープの種類による磁気飽和レベルの違いが数値として確認できます。

推察により自己判断ですが REC BIAS-1,REC EQ-1 のスイッチポジションで記載されたテープ種の中から選別したテープを使用して 調整用リファレンステープと判断するのがベストかもしれません。



電気回路の動作確認・試験・修理

TEAC X-10Rについて

30年以上前に録音したテープをまずは再生します。この時点ではテープがクラッシュしても良いようなテープを選別して装着します。今回は7号リールにまかれたテープを使用しました。空リールも同じ寸法のリールを使用してください。X-10Rはリールサイズによりパネルにリールサイズ切替スイッチがありますので 巻き取りトルクがリールの大きさにより変化するのを確認してください。大きさの違うリールは構造上使用することはテープをいためますので注意してください。40年ほど以前に購入しましたスプライジングテープも保管していましたが 接着面が劣化しており使用できません。テープも確認するとリーダーテープと磁性体テープの接合面が劣化により切断状態でした。

長期間使用していないテープでは経年変化が見受けられます。走行系を常に清掃しながらの作業となります。磁性体の剥離などもありこれからの作業が大変です。

テープ再生の結果 VUメーターの触れが右、左側で大きな差があり L-chが出力されません。電気回路故障と判断しました。回路図がない状態で点検をしましたら 再生ヘッドに触れましたがクリックノイズが出ません。アンプ故障です。このデッキは4トラック2チャンネル仕様のデッキです。同じ回路構成のアンプが2組ありますので再生ヘッドリード線をたどり 初段の増幅回路が判明しました。
NPNトランジスター2個の直結のアンプです。左右の各トランジスターのコレクター・ベース・エミッターの電圧を測定すると電圧に違いがあります。L-chのトランジスターを基板からとりはずし 回路計(テスターYEW3201)で各電極間の導通試験をしましたが過去からの経験により不良とは思えません。
周辺回路部品をチェックしましたが抵抗値、コンデンサーを試験しましたが不良箇所が見つかりません。各部品を精密測定をしますと初段ベースにありましたカップリングコンデンサー、タンタルコンデンサーのリークと判明しました。半田ごての熱で正常になってしまいましたが間違いなくコンデンサーの不良です。ペースバイアス電圧が狂いトランジスター回路が動作できない状態となっておりました。タンタルコンデンサーの交換で正常となっています。下図のホワード・リバース 再生ヘッド切替スイッチ写真の 右側にあります茶色のタンタルコンデンサーが交換しました部品です。左側の青色は当初よりのタンタルコンデンサーです。トランジスターは元に戻しました。一番故障箇所の発見しにくい故障です。L-ch,R-chの回路電圧はばらつきがありましたが 各電極電圧が5%以内の誤差でしたので正常に戻ったと判断しました。

動き出した X-10R
次項に記載事柄は一般的な電子部品の故障状態の説明となります。少し脱線しますが 修復の場合ある程度の経験がないと理解できない事柄かもしれません。多少とも過去の経験が参考となれば幸いです。

一般的な電子回路部品が不良になる状況と考察

今回修復します電子機器の場合数多くの部品から成り立っています。故障する原因を理解しないと骨董品的な機器を修復するには代替え部品を吟味する場合重要な要素となります。
テープデッキの場合は電気的な部品以外に動的な駆動・回転するメカニズムについても考察しなければなりません。デッキには特にゴム製品が数多く使用されており ゴムの材質により故障の仕方も変わります。ゴムは消耗品的なものであり経年変化で特性が変わり故障となります。またメカニズムに使われている潤滑剤の劣化も発生します。これらがメカニズムのオーバーホールとなるわけです。
又電気部品においても経年変化する部品も存在します。電子部品の壊れ方も理解しないと代用部品選別もできません。各部品製造メーカーでは年ごとに故障確率が減少する傾向にあります。軍用の無線機・測定機器などは製造コストが高額になっても品質の安定性が追究されますが 通常の市販品ではやはり低価格で供給となるため各部品に軍用機器・測定機器のような高品質・高額なものは使われていません。骨董品的な機器修理に際しては代替え部品の選択が重要となります。また新品の部品が供給できない場合部品レベルでの修理も必要となります。部品の特性も把握しなければなりません。
骨董品的な機器修復作業においては故障状況により中古パーツを使い 同機種からの部品移植修復も考えなければなりません。これを実施するとパーツ抜き取り機も修復され同じ機器が増殖する結果となります。いつも機器保管場所に苦慮します。物を捨てられない症候群そのものです。

トランジスター不良

ここで説明するトランジスターの故障点検の方法ですが 汎用小電力増幅用シリコントランジスターEP型の PNP NPN トランジスター 一般的な壊れ方を説明します。

通常は回路計の抵抗値測定モードで各電極間の導通試験をします。小生の場合常用回路計はYEW3201
型です。×100 のレンジで測定します。各電極間 順方向、逆方向の導通試験です。テスターを使っての試験方法は教科書などを参照してください。回路計が変われば正常値の指針位置が違ってきます。使い慣れた回路計でないと小生も良否判別ができません。経験がないと正確に判断はできません。デジタルマルチメーターは数字で表示されるため判断に苦労します。アナログの場合は指針の止まる角度を体が覚えています。

トランジスター故障の場合 各電極間完全オープン・完全ショート。EB間リークまたはショート・CE間ショートなどがあり ほぼ回路計で良否判別ができます。
接触不良の多いスライドスイッチ
:hfeなどが測定できるトランジスターチェッカーなどの測定機器を使用され良否を判断されている方もおられますが故障状態を理解できない場合誤判定の原因ともなりえます。回路動作電圧で試験をしなければ故障状態を見破ることができない場合も発生します。目視点検も重要な要素と解釈しています。

たちの悪いトランジスターの故障として1960年代後半から1980年代にかけて製造された小信号トランジスターにガリガと雑音の出るトランジスターが 国内各社半導体メーカーのトランジスターで発生します。

原因はトランジスターのリード線に問題がありました。導線に銀が含有されており 長期間使用するとリード線に空気中の酸素と水分により 導体表面に酸化銀が発生し表面が錆びて黒くなっているのが酸化銀です。これが結露などでトランジスターリード線付け根で 銀が導体となり電極間リーク(マイグレーション症状)となり 雑音としての故障となります。回路計では判別できず回路動作電圧で起こす不良症状です。トランジスター本体部の故障ではありません。トランジスターの外観目視点検とルーペなどを使い詳細を点検することにより判断できる事柄です。ICでも同様の故障が発生します。
ある日トランジスターがマイグレーション症状で高速回転

システムコントロール基板に多数使用されています小電力トランジスターにおいてマイグレーション現象・ウィスカも発生していました。メカニズムのシーケンスがおかしな動きをしています。2SC954の品番のトランジスターでB-C間リーク・短絡のため回路動作が不安定な動作となっています。回路計(テスター)の導通テストでは判別できません。汎用品NEC製であり 国内各社において同等のトランジスターは多品種存在します。規格表などを確認すれば他社トランジスターで代用可能です。3本の足が黒く変色していますのである程度目視確認ができます。使われている回路により誤動作症状は異なりますが根気よく調べなければなりません。ほとんどはスィッチング動作回路です。X-10R その5(ジャンク品)でのウィスカ症状による不安定な動きをする故障症状です。症状としてテイクアップリールモーター回転止まらす。キャプスタンモーターFWD回転しない。などの症状がありました。複雑な動作をするシステムコントロール基板での故障です。これらの故障状態はウィスカ症状による故障でした。ウィスカ症状の詳細については続編で説明しています。

マイグレーション事例として 小生愛用の DENON DP3000 がある日突然 ノーコントロール状態となり 高速回転状態です。日立製 小電力増幅トランジスターが上記記載の状態です。マイグレーション現象症状です。最終的にNPN・PNPトランジスターは 他社の小電力増幅トランジスターに全数交換しました。現在でも正常に動作します。DENONサービスではこの機種は回路故障であれば現在でもアフターサービスが可能です。ダイレクトドライブ ターンテーブルモーターはソリッドローター形トルクモーターです。 ターンテーブル外周に1000個の磁気信号が取り付けられています。 FG信号としてサーボコントロールされる構造です。当時 DP5000は上位機種であり FG信号は DP3000の倍で2000個です。ソリッドローター形2相トルクモーターを使用しております。クオーツロックサーボ搭載機は DP6000です。モーターは簡単に言うと誘導電動機の種類です。ACサーボダイレクトドライブブラシレスモーターとも呼ばれます。サーボコントロールされた信号で誘導コイルに流れる信号を制御します。家庭用VTRに使用されたヘッド・キャプスタンモーターは クオーツロック3相ACダイレクトドライブモーターがよく使用されております。ローターはフェライト永久磁石を使用しており ステーターは3相コイルです。コイルに流れる交流は PWM3相インバーター交流波形で動作する機種もあります。強力な動力モーターでない場合はPLLロック三相正弦波でパワーICによるドライブ回路が多用されます。サーボコントロール回路には 位相比較、電圧比較などコントロール回路は多数存在します。比較・検出回路がFGパルスと基準信号の違いにより アナログサーボ、デジタルサーボなど呼び方をする制御方式です。
TEAC X-10R のキャプスタンモーターは 直流ブラシ付き整流子モーター構造で モーター内部にFGサーボ用回転数検出部が内蔵され 直流で回転制御しております。アナログサーボです。なおリールモーターはダイレクトドライブDCモーターで トルク可変は供給する電圧でコントロールします。サーボ回路はありません。

話がちょっと脱線し横道にそれました。少し軌道修正します。

某メーカーサービスでは当時該当するトランジスターを全数交換する修理方法もありました。何も考えず該当するトランジスターを交換すれば治る機種も存在します。時間短縮のため部品取り付け面でなくパターン面に交換した部品を取り付ける ずぼらなサービスマン もいます。その名残かもしれませんが 現役サービスマンでも無秩序に部品交換する チェンジニア も存在します。当時はサービス業務として再発防止策でした。修復後の信頼性、安全性、見栄えも優秀な技術者の心得です。
現在ではトランジスターの価格も昔に比較して安価となっており 今日製造されているトランジスターでは諸問題は発生していません。トランジスター製造工程においても歩留まりが゛少なくなり 一枚のシリコンウエハーからは 数万個のトランジスターが大量生産され ロット単位ではコストダウンとなっています。ただオーディオ用ローノイズ選別品などはコスト高となります。選別品は枝番号表示又はトランジスターの品番自体がが変わる場合もあります。
上記の事柄などを判断した上で 修復作業においては現在供給されている代用トランジスターなどを吟味して使用すれば修復はできます。半導体メーカーでは手数のかかる選別作業により特性のよいトランジスターなどは多少原価高となりますが 現在供給されている高性能、安価な部品を使い メーカー発行の仕様書などを確認・理解すれば デッドストック品である同じ品番のトランジスターを探してまで修復する必要はありません。

修復作業においては部品の諸特性を考察した上で 代用部品が回路動作に 無理のない安全な使用方法か ? を考える必要があります。(回路設計の領域になることもあります)

スライドスイッチ不良

上記トランジスターの故障症状によく似た現象で 多回路・多接点型スライドスイッチにおいて数多く発生します。小生常用の真空管プリアンプ LUXKIT A3400 のレバースイッチで雑音が数か所で発生しました。これもトランジスターと同様に スイッチの接点部分に銀が含有された金属を使ったための症状です。トランジスター故障と同様で リークによるランダム雑音が発生します。

今回修復しました X-10R では 多接点スライドスイッチはリバース・ホワードヘッド切替スイッチなどに使用されています。接点間リークは発生していませんでしたが 接点接触不良で不安定な回路動作が確認できました。スライドスイッチでの雑音発生 この症状を マイグレーション現象といいます。詳しくは検索してください。電位差がある場所でよく発生します。X-10Rではキャプスタンモーター制御IC NJM2903D で発生していました。
スイッチ接点部の修理は精密な分解・修理・組み立て作業が伴います。新品部品が供給されるのであれば部品交換が時間もかからずベストです。接点部分解修理作業は修理時間とリスクが伴います。X-10Rで使用されているスライドスイッチでは接点材質などは良質なものを使っているようですが レベル変動などの接点接触不良の時々症状は確認できています。

初期の家庭用VTRの録画、再生切替スイッチとして 各くメーカーが同じアルプス電気製のスライドスイッチを使用しています。各社とも同じような接点不良が発生しており 接点に使用される金属の材料・種類により故障が多発するスイッチもありました。製造メーカーに確認すると形状が同じでも使われている接点材料の違いにより不良となりにくいスイッチは購入コストが高くなるようでした。部品レベルでの品質により故障発生率が増加することになります。各メーカーはコストダウンを意識して製造していたため 経年変化により信頼性が悪くなり 過去には多発故障もありました。
その後の回路では機械的スイッチから IC・トランジスターを使った電子スイッチに変わり μコン制御で故障発生率も低下し 品質も良くなっています。

信頼性のよい部品は原価高になってしまいます。設計者は痛し痒しで さじ加減が大変です。製造工程ではビス1本1円をめぐる製造コスト削減をしていました。

コンデンサー不良

良否判断がしにくい部品はコンデンサーです。コンデンサーは回路により使われるコンデンサーの種類が多く故障の仕方もさまざまな故障をします。故障状態として記述しますと、

1) 容量抜け


GX-280D-SSで交換した部品
特に多いのは電解コンデンサーです。アルミ缶内に電解液を含んだ電極をゴムでシールしてありますが 中の電解液漏れで容量が減少する症状です。液漏れが発生しますと規定容量の約1/10以下に減少します。リード線が錆びていたり基板が変色していた場合は疑るべきです。
通常の回路計では容量を計測することができませんが 機種により容量値も測定できる回路計も存在します。小生の場合は回路計の内臓電池で充電するときの針の触れ方で大まかですが良否判定をしております。精密測定時にはインピーダンスブリッジの測定器を使用します。
特に温度が高くなる部品付近に取り付けられた電解コンデンサーは信頼性が低下し 容量抜けとなる故障確率が高くなります。なるべく温度特性の良い 105℃表示をしてある補修部品を使用することをお勧めします。
X-10R バイアス発振ブロックとトリマーコンデンサー

2) 電極間短絡(ショート)

電解コンデンサーにおいては内部短絡故障により温度が上昇し防爆弁が開く場合があります。コンデンサーが膨れていたり外皮が変色している場合があります。昔のコンデンサーですと発煙事故もありました。現在の電解コンデンサーはアルミキャップの上部に切込みが入っており圧力が上がるとひび割れして圧力を逃がす構造です。目視で溝の歪がないか点検してください。大型の電解コンデンサーですとゴムパッキン部に防爆弁が取り付けてあります。安全弁の一種です。電極間ショートの場合は比較的簡単に回路計で発見することができます。

3) 完全オープン(断線状態)
GX-280D-SS \h6y・再生4chアンプと各VR

あまり見かけませんがコンデンサー内部の電極と取り出しリード線の接合部でのはずれが発生、 故障としては少ないですが経験しました。

4) 電極間リーク

一番たちの悪い故障です。今回発生しましたタンタルコンデンサーでの故障状態です。壊れ方もさまざま有り 電圧を加えないとリーク(漏電)しないものがあります。回路計の抵抗値測定時には内臓の乾電池の電圧で測定しますが (YEW3201の場合 1.5V) 回路計の測定する電圧が 実働回路電圧よりも低いため 不良症状が回路計で確認できないことがあります。特にハイインピーダンスの回路では発見しにくい故障です。定電圧電源を使い 高感度電流計で (数μAが計れる電流計)リーク電流が判明する場合がありました。そのときのリーク電流程度により不具合になり方も違っております。種類の異なるコンデンサーでは フィルムコンデンサーでもリークが発生がありました。製造上での問題で異物などが混入が原因かもしれません。
GX-280D-SS パンクしたスパークキラー・コンデンサー

もしも通常の電解コンデンサーの極性を間違って取り付けてた場合も同様にリーク電流が発生します。交換部品の極性を間違えないでください。修理者が作った故障です。人間は思い込みで間違いをします。特に回路構成が ハイ・インピーダンスの場合 カップリングコンデンサーは 絶縁特性のよい 良質のコンデンサーを使用しなければなりません。タンタルコンデンサー・フィルム系コンデンサー・OSコンデンサーなどです。無極性のコンデンサーと有極性電解コンデンサーとを同じ容量値で比較すると電解コンデンサーは小型で部品単価が安価です。その結果回路構成により オーディオ回路では数多く電解コンデンサーを使用します。

5) パンク(破裂)


GX-280D-SS パンクしたリールモーター進相コンデンサー
今回 GX280D-SS で発生していました。コンデンサーの種類ではMPコンデンサーです。絶縁物でシールしてある部分からパラフィンのようなものが流出しており 周辺シャーシー部に物質が散乱し付着しています。目視で確認ができます。最悪の場合には発煙となります。測定すればたぶんオープンまたは容量抜け状態と思います。
MPコンデンサーとはメタルライズドペーパーコンデンサーの略称で 金属化紙を電極として作られたペーパーコンデンサーです。通常は電極間リークが発生してもジュール熱でショート箇所の金属が昇華し絶縁が回復する構造です。その機能が働かなかったため温度が上昇しパンク(破裂)症状となることです。現在ではペーパーコンデンサーはほとんど使用されず より絶縁性がよい プラスチックフィルムのMF(メタルライズドフィルム)コンデンサーに変わっています。又安全性・信頼性も高まっています。電力を扱う回路においては MFコンデンサーにおいても不良は少ないですが発生します。使用箇所により より安全性確保のため コンデンサーに直列接続でヒューズを挿入し 発煙事故を回避する使用方法もあります。

電解コンデンサーは極性があり絶縁性が悪く リーク(漏洩)電流が発生します。極性がないコンデンサーとしては絶縁性が良い誘電体がフィルム、マイカ(雲母)使ったコンデンサーです。誘電体がチタン酸バリウムはオーディオ回路にはほとんど使われていません。高周波回路に多く使用します。コンデンサーの種類により周波数特性が違いますので 修復のときには 用途に応じたコンデンサーを選別使用しなければなりません。耐圧電圧が明記されていますので使用用途に応じて使用電圧も確認する必要があります。耐圧電圧以上の箇所に使用すると故障の恐れがありますので厳守してください。

今日のPCマザーボードでは電解コンデンサーは日本製と明記されています。信頼性が高いからです。2002年前後のpen3,pen4,マザーボードとDVDドライブは最悪です。海外のローコストの電解コンデンサーとピックアップは ほとんどのPCにおいて数年もすれば コンデンサーはパンクとピックアップリードエラーとして故障です。最悪の品質です。




抵抗不良

固定抵抗器についてはコンデンサーに比較して数多くの不良は発生しません。真空管回路と違い消費電力が少なく 回路電流が少ないため発熱する箇所が少なくなっております。ただ電源回路、モーター制御など多くの電力を扱うトランジスター回路では 回路故障により過大電流となり焼損する抵抗器があります。大電力を扱う回路では基板から浮かして放熱作用を高める設計となります。現在では難燃性の皮膜を使った抵抗器がよくつかわれます。よほど設計に無理がない限り故障することは少なくなっています。
抵抗器の不良症状としては

1) 抵抗断線

言葉の表示のごとく抵抗器がつながっていない状態になることで 回路計で計測すれば 簡単に判別することができます。故障原因としては 抵抗器が悪いのではなく 回路故障により焼損断線が考えられます。カーボン抵抗などは絶縁皮膜が焼損したり 変色している場合もありますので 目視点検で発見できる場合もあります。

2) 抵抗値高化
ソリッド抵抗

言葉のとおり表示抵抗値より抵抗値が高くなる事をいいます。部品単体での製造ミスによる不良もありますが 回路電流が規定値より大きくなったときに発熱作用により 抵抗体が温度変化で抵抗値が高化することがほとんどです。設計不良により消費電力値に余裕がない場合など故障する確率が高くなります。断線に至る前の症状でもあります。中途半端な抵抗値高化は判定しにくくなります。回路網を切り離し抵抗器単体で測定すれば判別可能です。
1960年代に製造された電子機器において多用された1/2W型ソリッド抵抗は品質は良くありません。ほとんどの場合抵抗値が大きく変化しています。写真の下側に2本が該当します。特に真空管式の機器の修復の場合は疑らなくてはなりません。その時代のペーパーコンデンサーも品質が良くありません。写真の上から3本はHP測定機に使用されていた2W,1W,1/2W型誤差2%規格のソリッド抵抗ですが現在でも大きな品質の劣化は認められません。下側2本は日本製1/2W型で第4帯が銀色ですので10%誤差を表しています。未使用保管品ですが誤差は規格外になっていました。品質は良くありません。

3) 抵抗値低下

あまり抵抗値が低下した症状には遭遇しておりません。ただ巻き線抵抗で絶縁被服が破れ半田くずにより一部のまき線どうしがショートして抵抗値が低下したぐらいしか心当たりはありません。

4) 可変抵抗器よりのノイズ

可変抵抗器通称ボリュームは経年変化で回転させると雑音が発生することがあります。別名ガリオームとも呼ばれますが 抵抗体にブラシが移動しますが 接触面で抵抗値の変化がスムーズではなく 不安定な状態で 接触抵抗の変化度合いが大きくなり 雑音となるわけです。接触不良状態をいいます。新品部品に交換もしくは接点復活剤などで騙すという修理です。接点復活剤は性質上 さまざまな問題があります。復活剤の種類および使用量には注意が必要です。

スイッチと同じで部品レベルで使用する材料により接触不良になりにくい可変抵抗器も存在します。ただコスト高となるため 各メーカーの設計者はコストと品質を天秤にかけて機器は作成されます。小生の現在使用しています真空管式コントロールアンプは 作成後40年ほど経過していますが ガリオームとはなっていません。オープン型のVRですが現在でもスムーズに可変できています。VRもピンからキリまでありますので 選択には注意をして使用してください。

5) 半固定抵抗器

半固定抵抗はあらゆる特性調整箇所に用いられます。抵抗器単体での使用状況では 調整さえすればほとんど動かすことがなく 触らない限り故障することが少ない部品です。ただ経年変化後再調整時に回転させると ガリオームとなり設定が安定しない場合が数多く見受けられます。最悪は交換しなければなりません。又部品も壊れやすく 丁寧に扱ってください。
接触不良になりにくい半反固定抵抗もありますが コスト高となり どの程度の部品を使用するかはメーカーの考えで方であり 部品により商品品質は変わります。測定器などは高級なものを使っており 経年変化での故障確率が少ない部品を使用している機器です。

 IC不良 (マイグレーション現象)


マイグレーション症状のキャプスタンサーボ IC JRC NJM2903D


今回テープデッキ修復作業において 予備品確保のため オークションでジャンク品を入手しました。小生のデッキはヘッド摩耗が進んでおり 今更録音ヘッド・再生ヘッドを新品にする場合は部品購入費用が高額となるため 使用頻度のすくない X-10R を入手しました。オークションとは大きな賭け事です。入手するまで詳細は分かりません。入手した デッキは
製造ロットも似通っており 修復の参考とするためです。もしもヘッドを交換する場合は テストテープが入手できていませんので 交換作業を実施しても正規の調整は 現実には不可能です。ジャンク品を探し部品取りとしても使えるように入手しました。録音、再生ヘッド1個9,000円としても 36,000円部品代だけでの出費です。その他消耗部品、キャプスタンモーター完成、総合調整、メカのオーバーホール、技術料、諸経費を加算すると 約6~8万円程度の最低出費は覚悟しなければなりません。新品と同様になるかは不明ですが。機能部品は入手できても外観部品の供給は不能と思います。
JRC NJM2903D

購入後点検をしますと 小生のデッキと同じでキャプスタンが回転しません。ベルトの経年変化による切断と 同様にメカニズムの不具合も確認できました。同様の作業方法で ヘッドブロックを本体から脱着して 各部の注油でメカニズムはスムーズな動きとなりました。各ヘッドの摩耗頻度も少なく ただ長期間環境の悪い物置などで保管していたため ヘッド面が錆のような異物が付着しており 細目のコンパウンドで研磨しました。

一応メカニズムも正常になりましたが 大きな問題が発覚しました。回転ムラ症状です。テープスピードが不安定で 時々止まってしまいます。正常に近い場合もあります。
キャプスタンモーターを直流安定化電源で モーター単独で動かすと大きな回転ムラは発生しません。最終はキャプスタンモーター完成の注文しかないと思いましたが どうも電気回路の制御不良と思われました。手間はかかりますが キャプスタンモーター制御回路とシステムコントロールの信号やり取りから調査しました。

修復した NJM2903D
回転数制御はモーター内部のFG信号と基準電圧を比較制御回路と判明しました。骨董品HP製オシロスコープ観測により FG信号の正弦波に似通った信号がICに入力されます。DIP8 NJM2903D 2組入ったコンパレーターICです。コンパレーターで波形成形しています。モーター電流制御トランジスターのコレクター波形を観測すると制御波形にランダムですが異なる波形が観測できました。DCモーター回転制御はパルス波形ドライブによる間欠電流制御です。電車の直流モーターで使われている制御方式に類似しています。供給電圧は一定であるが 回転速度に応じて 電流を 流す・切断する タイミングを繰り返して回転数を一定に保ちます。パルス波形によるチョッパー制御方式です。シリーズ抵抗制御に比べ効率が良くなっています。(現在の電車はVVVF・PWMインバーター制御)
キャプスタンサーボ基板

回路を順番に追いかけるとIC初段1pin出力回路で電圧がふらついておりノイズが確認できました。その時点でICをよく観察すると 8本のICリード線(足)が黒く変色が確認できます。ひょっとしたらトランジスターと同様の マイグレーション症状の可能性があるため 基板からICを取り外しリード線の付け根をルーペを使って観察すると ケースであるプラスチック母体の色合いと異なるものが付着していました。黒色のプラスチックに似通った酸化銀ですので注意深く観察します。IC1pinと2pin 間に酸化銀幕が付着しており 電極間リーク現象です。NFB回路でありレベルコントロール基準点であり 回路はハイインピーダンスです。空気中の水分(結露)、酸素があるとリード線に含まれていた銀(Ag)が酸化銀(Ag2O)となります。ハイインピーダンス回路、高電位差により マイグレーション症状は顕著に表れます。補修用同じIC部品を探すにおいて30年以上前に製造されたICです。入手が困難かもしれません。部品を探すのも大変です。IC内部の故障ではないため プラスチックパッケージ表面に酸化銀が融着しているだけです。酸化銀被膜を極細のダイアモンドやすりで切削、リード線はカッターの刃先で研磨して ICを元に戻すと正常となりました。リード線が今後酸化しないようにリード線(ICの足)表面、DIPパッケージに信越シリコングリスを被膜程度に塗布しました。同じ信越製 耐熱、耐絶縁特性のシリコンゴムKE45で保護しても同様の効果があると思います。同様にトランジスターにおいても部品が入手できない場合はこの作業は有効です。リード線が酸化しないように絶縁被膜を施すことです。ICNJM2903Dの写真は X-7R MKⅡでのIC修復写真です。

以上の作業でキャプスタンモーターは正常な動作となりました。テープスピ-ド調整用VRは触れておりませんので 現時点では音楽を再生してみましたが 正常と判断しました。後日テープスピードを詳しく検査する予定です。
新規作製しました検査用テープスピード測定テープにより誤差が-1.8%が確認できました。現在はデッキの規格値 ±0.5% 内の +0.28%に調整しました。測定用テープ作成および測定方法については後半で記載しています。

今回の不良症状はトランジスターと同様の マイグレーション現象 による故障であり IC内部は故障していません。 IC現物修理を実施して修復できました。前項で述べたように小生は故障原因を追究し 部品レベルまで修理をします。メーカー修理ですと キャプスタンモーターassy(制御回路基板付)交換で高額な修理費用が発生すると思います。しかし原因調査、修理に必要以上の時間が必要となります。修理点検方法などをほかの人、メーカーサービス担当者に聞くこともできません。修理点検方法などが寝ているときにも夢として出てきます。お告げかもしれません。回路動作状態において技術的な基本動作・原理を考えながら問題解決策を模索しているからです。

動き出した GX-280D-SS




軌道修正をします。脱線しました。すみません。

引き続き TEAC X-10R の電気回路の続きです。

一応メカニズムについてはスムーズな動きとなっています。修復の過程でプリント基板にあります調整のできる箇所は サービス技術資料が入手できていませんので 極力触れないようにして 修復にかかります。特に半固定抵抗(SVR)をパターンから推察するとバイアス、イコライザーの用途が多く メーカーからの出荷時には特性を調整してあるはずですので回路をいじくらない限り大きくずれることはない と判断しました。
このX-10Rはオートリバースモードが搭載されています。3ヘッドデッキの2倍のヘッド数 6ヘッド仕様です。FWD-PLAY(REC)  REV-PLAY(REC)  専用に同じ規格のヘッドを使用しています。部品単体でのばらつき補正のため 各ヘッド、各チャンネルごとに 特性調整箇所が存在します。通常のデッキの2倍の数だけ調整する箇所があります。

30年以上前に録音しましたテープを再生するとランダムにVUメーターの振り方が違っていました。同じ場所を再生してもその時により 指針の振れ方が違っており FWD,REV切替スイッチが接触不良をしていると判明。今回新品のスライドスイッチが入手できないため スイッチ修理を試みました。
きれいに清掃された各ヘッドとテープガイド金具
前項目の記述していますスライドスイッチは 経年変化に伴い信頼性が良くありません。スイッチには数多くのSVR調整箇所を切り替えています。この状態では修復ができませんので 3個の切替スイッチは基板から着脱して修理をしました。最悪時にはスイッチを分解し 接点を修理後再組み立てをする予定で取り外しました。
結論は取り外したスイッチに クリーニング溶剤を隙間から流し込み その後接点復活剤などを流し込み乾燥後の結果 ほぼ接点が正常動作となったため 完全に分解・組み立てまでの作業は今回実施しませんでした。
スライドスイッチだけを取はす゜し 修理をしているため 基板には溶剤によるダメージはありません。ただ数多くのハンダ除去・再ハンダ付け作業が伴います。
システムコントロール基板 AN6251 周辺回路

スライドスイッチを基板の元の位置に戻し テープ再生を繰り返しましたが昔の記憶どおりのVUメーターが振れるようになり 正常に動作していると思います。 再生レベルも極端なチャンネル差がなくなりました。やはりスライドスイッチの接触不良が原因と判断しました。FWD,REVではチャンネル差がありますが ヘッドの磨耗か アンプ故障かは 資料がないためSVRを調整していないことも含め深追いはしていません。

この状態でCR発振器からの正弦波および CDプレーヤーからの音楽信号を録音しましたが 何とか実用になることを確認しています。その他細かな調整・修理箇所は数箇所ありますが 今回は記載しておりません。

修理中に突然サプライリールモーターが止まらない異常が発生しました。半導体シーケンスのシステムコントロールの故障です。技術資料がないため数日はプリント基板から 大まかな回路図を自分で作らなければなりません。ダーリントントランジスター回路でモーターを制御しているのが判明しました。リールモーターは同じ方向しか回転はしません。各モードごとによりシステムコントロールのICよりの信号で NANDゲート(7400P)、NORゲート(7402N)のICを使いタイミングおよびリールモーター電圧制御をしているのが確認できました。システムコントロールIC(AN6251)はICソケットに装着されており インターネットで検索しますと ICの動作内容が判明。カセットデッキ用汎用システムコントロールICと思います。

この状態で以前録音済みのテープを破損してしまいました。修理中はどのような症状が発生するか不明です。ゆえにクラッシュしても良いようなテープで 正常動作が確認できるまで試験をしてください。故障個所はサプライリールモーター制御ドライブ回路のトランジスター(Q80 2SC1318,Q78 2SD313)2個と抵抗(R174 47Ω1/4W)焼損です。


リールモーターは録音・再生モードと早送り・巻き戻しモードではモーターでのトルクが違います。これを制御するため 早送り・巻き戻しモードではモーターに供給する電圧が高くなり 故障したときのモードは早送り・巻き戻しモードでしたので回路で消費されている電力は一番大きなタイミングで故障しました。

又数日後同じ故障が発生したため 数日間は回路を把握するために基板とのにらめっこと頭の体操を繰り返しました。最終的にはシステムコントロールICがICソケットに取り付けられており ICとソケットの接触不良の可能性があったため足の矯正、およびクリーニング後は現在まで正常に動作しています。その後の4bitマイコン制御システムコントロールに比較して周辺回路が多く 当時のシスコンを再認識しました。時々症状 一番修理では確認ができない いやな症状です。技術資料があれば無駄な時間、不必要な時間でのロスタイムが発生しません。

予備機として購入しましたデッキで長時間再生中テープが停止する症状が確認できました。リバース側再生中の出来事です。巻取り側のモータートルクが突然急激に低下しテンションアームスイッチが働くためでした。リールモータートルク制御回路の故障です。またもやシステムコントロール回路の故障です。各回路を点検しましたところリールモーター制御ダーリントン接続トランジスター回路での長時間使用すると時々制御不能となるのが判明しました。Q80,Q78 2SC1318・2SD313 が自己発熱による特性不良であると判断。ドライブトランジスターはコレクター損失が625mWであり通常の小電力トランジスターではコレクター損失が小さく代用使用できません。コレクター損失が1W程度のトランジスターで代用修復できました。2SD313は正規品と交換。故障個所判別に写真のように各測定ポイントの電圧を長時間監視しました。ICで制御された回路信号の不良? リールモータードライブトランジスターの不良? 時々症状ですとシステムコントロール回路での故障診断は回路が複雑であり簡単には良否判断ができません。
写真のように複数台の回路計・デジタルマルチメーターを活用して不良となる個所の原因を調査します。オートパワーオフ機能のデジタルマルチメーターでは長時間の監視ができません。不良個所を特定するため基板にテストポイント端子を新設します。各回路の動作状況を見極め原因を追及・判断します。この作業では複数台のアナログ回路計(YEW3201)が活躍します。リレーシーケンスと違い故障個所の判断に悩みます。リールモーター制御信号で動作状態によりリールモータートルクを可変しているからです。TR交換後同様の症状は長時間エージングをしましたが再発していません。

参考にQ78,Q79 2SD313エミッター抵抗の電圧とコレクター電圧を記載します。(リールはラージポジション)

再生モード正常動作時には セメント抵抗R179,180 3.3Ω/5W で発生する電圧は 巻取り側が2.2V 供給側が1.2Vの電圧が発生します。リールモーターの入力電力は4.6Wと1.2Wが各リールモーターの値です。コレクター電圧は6.1Vと9.6Vを観測しました。その時の各リールモーター供給B電圧は13Vでの動作状況です。早送り・巻き戻しモードではリールモーターの供給電圧は33Vとなります。リールモーター制御回路は大きな電流・電圧変化を制御します。この回路では 回路設計において部品単体スペックに対して余裕があるか? トランジスターの製造に問題がないか? 現時点では不明です。しかし2SC1318・2SD313 はこの回路では信頼性が良いとは思えません。安定した通常動作時にはダーリントン接続トランジスター回路は余裕のある定格内での動作をしています。時々症状のため2SD313と同時に交換することをお勧めします。交換しましたトランジスターはテスターでの導通テストでは良否判断ができません。修復後エージングと動作確認に長時間の作業内容となりました。
リールモーターは定格表示として DC 10/24V  10/20W と表示されています。各モードに応じてリールモーターに加える電圧・電流をシステムコントロール回路で制御し トルク・回転数を可変しています。

修復に使用している各種半田
プリント基板などにおいては経年変化による 自動ハンダ付け個所にクラック(金属疲労による破断)が発生する事があります。特に大きな電流が流れ発熱が多い場所において数多く発生します。発生個所の部位は大電力トランジスター・電源整流ダイオード・発熱の多い抵抗などが該当します。ルーペなどを使って金属疲労個所を確認することも可能です。特に発熱を伴う電子部品のハンダ付け箇所に追加ハンダ付け作業を実施することをお勧めします。又コネクターなどでは両端近くにクラックが発生します。追加ハンダ付け作業により今後の故障発生率が低下します。時々症状などが改善される場合もあります。ハンダ付けは電子回路修理では基本作業です。

修理作業における汚いハンダ付けは技術者の恥です。信頼性も低下します。

オープンリールデッキなど 旧機種のメンテナンスをされている会社では 長時間エージングが必要であり 長期修理期間と高額な費用が発生するわけです。予約をしないと修理してもらえない会社も存在します。

メーカーサーポートが得られませんので 修復するには技術・努力と時間が必要になるわけです。

電気回路、メカニズムの大まかな問題が解決しましたので 臨時停車寄り道の話です。

録音・再生ヘッドについて



上のの写真は未使用保管品 1/4 インチテープ用のヘッドです。左側のヘッドはエンドレス、リアジェット8トラックデッキ用録音再生共用ヘッドと消去ヘッドが一体型のコンビネーションヘッドです。リアジェットカセットでは一箇所しかヘッドを挿入する場所がありません。コンパクトカセットと大きさと構造が異なり テープカセット内部にはテープパッドとピンチローラーが組み込まれています。初期のカーステレオ・カラオケ再生に良く使われたテープを録音再生するためのデッキに使われているヘッドです。カセットのもう1つの穴は自動チャンネル切替電極センサー用です。

右側のヘッドは 2チャンネル2トラック 38cm/sec デッキに使われている録音専用ヘッドです。トラック幅の違いが判ります。又クロストーク特性に影響するガードバンド幅(無録音帯)も違っています。

テープが1/4インチですのでミリメートルで表すと 1インチ=25.4mmとなり テープ幅は6.35mmです。近年までに良く使われていたベーター・VHSテープは1/2インチテープでしたのでオーディオテープに比較してテープ幅が広いことがわかります。UマチックのVTRテープはアルミ弁当箱のような形状で テープ幅は 3/4インチ テープスピード 9.5cm/sec ビデオ信号と音声2チャンネル で最長60分録画できました。統一型オープンテープVTRも存在します。1/2インチテープで7号リールに巻かれたテープを使用していました。1時間の録画・再生ができます。再生専用VTRで昔ファッションホテルなどでモザイクが入った****映画が自主放映されていました。その後B&W画像ですが金融機関では長時間記録できるコマ撮りのVTRも存在しました。ビデオヘッド回転制御はベルトのスリップによるヘッドサーボ方式でした。基準信号は固定ヘッドに交流バイアス電圧は無く パルス波形を記録します。再生される信号は微分波形となりヘッドサーボのコントロール信号となります。
オーディオ用1/4インチテープでは規格により トラックの幅がデッキの種類により異なることが判明します。又使用する用途に応じてテープスピードも違っています。今回修復しましたTEAC X-10R のデッキでは 1/4インチテープ 4トラック 2チャンネル仕様のデッキです。ヘッドの写真は上図に記載していますのでご確認ください。音質、S/N比などが良質と言われるのは テープの磁性体に記録したり再生する場合に トラック幅が広く テープスピードが速いほど特性の良い良質の録音・再生することができる機器が有利となります。

臨時停車で燃料も積み込みましたので次の調整へと進めます。

テープスピードについて


周波数カウンターで1000Hz測定
TEAC X-10R の仕様はテープスピードは2種類のテープスピードです。基準はインチ単位を使っているため インチのテープスピードは 7 1/2 インチ と 3 3/4 インチが正規のテープスピードです。これを日本国内で使用されています。メートル法に直すと
7 1/2 インチは  25.4mm×7 1/2 =  19.05cm
3 3/4 インチは  25.4mm×3 3/4 =  9.525cm
15 インチは    25.4mm×15  =  38.10cm

上記の秒速でテープが走行しているのが判明します。表記上 38cm/s  19cm/s  9.5cm/s  です。

3600ft 巻きの10号(10inch) オープンリールテープですと 1フィートが 30.48cm ですので メートルに直すと
3,600×0.3048=1097.28m となります。国内では 1100m テープとして表示されています。
注釈 インチとフィートの換算は10進法ではなく 1ft(フィート) = 12inch(インチ) であり メートル法と違い計算は簡単ではありません。


HPマルチプライヤー(逓倍器) ×1000
この数値からテープスピードで 使用可能な時間を計算してみますと
1100m/0.1905=5774.3秒 と計算できます。これを分に直すと 96分14.3秒 となります。
現実にはテープスピード誤差が甘味されますので通称 片道90分テープとして扱われています。オートリバース機能がありますので 19cm/sの場合 往復3時間の録音・再生が可能と計算できます。
もしも2%テープスピードが速い場合は 90分録音した場合は 1049.274m走行しますが 90分経過しても録音途切れは発生しません。+5%までの誤差は90分録音できます。+6%では90分録音できません。

小生が小さいころに使用していました 真空管式2トラック・モノラル、テープレコーダーは 当時アセテートベースの磁気テープでした。テープ厚さは50ミクロン(2MIL)の厚さで 7号または5号テープが使える仕様のテープレコーダーです。早送り、巻きもどしの時にあわてますと よくテープがクラッシュし切れました。小さいころですからその当時ありましたセロハンテープを使い親にばれないように修復しました。スプライシングテープの存在を知らないころです。
注釈 1ミル(MIL)は 1/1000インチ です。録音テープの厚み、レコード針先構造でよく使われます。

その後テープの切れにくいポリエステルテープが販売されるようになりました。テープの厚さも 50ミクロンから35ミクロンとなり 録音・再生できる時間も1.5倍です。X-10R・TC6635 を使っていた時代はほとんど35ミクロン厚のテープでした。アセテートベーステープは見かけず 使用していたのはラジオ放送局ぐらいです。なぜかというと テープ切断事故があった場合 アセテートベーステープは伸びが少ないため修復が簡単なためです。音伸びが発生しません。Scotch 111はアセテートベースで厚さ50μmのテープです。

LEADER LFM-39A WOW&FLUTTER METER
前項目でも述べたように デッキがどのくらいの精度で動作しているかをテストするテストテープがありません。まずはテープスピードの確認作業からはじめます。
通常であればテストテープの正弦波信号を再生して周波数カウンターで計測するのが簡単ですが手持ちがありません。カセットテープ用は 3KHz,8KHz,10KHzのテストテープとワウ・フラッター計がありますので簡単に確認することができますが まずはオープンテープ測定する測定治具から作成します。
オープンテープのミュージックテープには メーカーにより異なりますが テープのはじめに正弦波信号が10秒ほど録音されているテープが存在します。レベル調整用の信号を周波数カウンターで測定すれば かなりの精度でテープスピードの確認ができます。

LFM-39A ワウ・フラッターメーターの表示では JIS 3KHz W/F測定時で 測定結果はテープスピード偏差 0.0% ワウ・フラッター値 0.1% を測定した時の表示です。テープスピード調整用テストテープを使用しての調整です。同時に周波数カウンターも並列接続をしてマルチプライヤーで100倍に逓倍後 3000.000Hz±0.5% をモニターします。写真は後日19cm/s 3KHzのテストテープ(Technics OW190)入手後の測定結果です。(続編のブログに記載しています)正規のテストテープがあれば測定器誤差も甘味し 上記測定器を用いてダブルチェックで調整します。

オープンテープ用テープスピード確認用テープの作成
各社のタイミングリーダーテープ ストップウオッチ インナーホンより取り出したマグネット

テストテープのない時代ではテープスピードを確認用のテープがありました。計測はテストテープを走行させて ストップウオッチで時間を計測する方法でした。メトロノームのカチカチという音が録音されたテープで計測していました。今となればあまり精度は正確でなかったと思います。古典的な計測方法です。
そのようなテープもありません。正確に測定する方法としては 前項目で説明しましたとおり 一秒間に走行する距離をテープにマーキングすれば そのマーキング箇所でもって測定することができます。
業務用生テープは別として 一般市販されていたオープンリール生テープを購入すると必ず磁性体テープの両端にリーダーテープが付いています。テープメーカーによりリーダーテープに模様または色違いでマーキングされているテープがあります。その間隔を計測すると19cm間隔でマーキングされています。このマーキングを計測すればテープスピードが確認できます。リーダーテープは今となってはマーキングされたテープは販売されているか不明です。MTSではリーダーテープを扱っておられますが 現物を確認していませんので マークがあるかどうかは確認できていません。生テープではリーダーテープは長くても2mほどしかありません。注意深く探せばスコッチのタイミングリーダーテープが見つかると思います。

原始的なアナログ方式の テープスピード測定・調整作業 

以上の考察により 録音されているテープに新たにマーキングをすればよいわけです。長時間測定すればそれだけ精度は向上しますので 今回は 1905mm 間隔にマーキングをしました。このマーキングを10カウントすると100秒かかります。テープの磁性体でないテープ面に 油性マーカーでしるしを付けます。このマークを計測すればよいわけです。テープ走行が早くマーキングの幅が5mm程度でしたので計測は難しかったです。目視とストップウオッチを使ってでの測定ですので測定誤差が発生します。あまりお勧めはできません。そこでマーキングされた磁性体に新たに信号を付加すれば音として計測ができます。余剰のヘッドを使って試みましたがうまく記録されません。次に考えたのが音楽が入っているテープの一部を消去する方法です。連続した正弦波信号では計測中楽しくありません。好きな音楽を聞きながら計測できるテープにマーキングすれば測定も楽しくなります。おもちゃのようなテープレコーダーでは消去ヘッドが永久磁石であったことを思い出し 小さな永久磁石を探しましたら 携帯電話を入れ替えると機種によりインナーヘッドホーンがおまけでついていました。通常ほとんどイヤホンは使わず数もたくさんあるので その一部を分解して小さな永久磁石を取り出しました。取り出した磁石でもってマーキングした部分を磁石でこすると 一部分だけ消去されます。テープの長さを測定するときの巻尺は一級と表示されている巻尺でマーキング゛位置 1905mm をくりかえし計測します。

注釈 1級表示の巻尺(コンベックスルール)とは JIS B7512 常温(20℃)において許容差は ±(0.2+0.1L)mm (L=テープの全長の長さm) を保証している巻尺であり 使用した巻尺1inch幅5mでは 0.2+0.1×5(m)=0.7 5mを計測時±0.7mm以内の許容差である。2mの測定であれば許容差は±0.4mm以内である。

テープにマークする場合誤差の少ない巻尺(コンベックスルール)を使い正確な計測作業をしないと誤差の少ない正確な測定結果を得ることができません。現実にはマーキングを30箇所程度作成です。後日5号太ハブリールテープにテープスピード検査・確認用として 90m のテープに最初から終端まで1905mm間隔に2mm幅マーキングを好きな音楽を録音したテープに作成しました。2つの机を合体させて 正確にマーキング作業です。今回消去用マグネットはPC用DVDドライブに使われていたピックアップレンズ駆動用の小さなネオジゥムマグネットでマーキングしています。おかげさまでパルス幅の狭い正確な信号でテープスピードが計測できるようになりました。±0.1%精度まで追い込めます。この値でもって新規に作成した 3KHz副標準テープ の誤差が判明しました。以後は簡単に校正済みの副標準テープを使い ワウ・フラ計・周波数カウンターでテープスピードの確認、調整ができます。

上記のテープでもって消去しました音を確認してストップウオッチで計測します。今回新たに100円ショップでストップウオッチを105円で購入しました。時間誤差は常温1ヶ月で30秒以内と表記されており 100秒程度の計測であればほぼ誤差がない状態です。30/2592000 の精度です。最悪の誤差は 0.0011574%です。現実として電波時計と誤差を確認しましたら +20秒/月 でした。

精度を上げる測定方法もあります。上記マーカーを付けたテープをA/Dコンバーター編集ソフトでもって計測する方法です。編集ソフトで音源を録音しますとオシロスコープと同じ波形が記録され消去した場所の波形は矩形波状となっており 記録されたタイムチャートにより正確な時間が計測できます。1/100 sec 程度の分解能・精度で測定できます。音を聞きながらストップウオッチで人間が計測するより正確です。10秒計測時でも誤差は計測可能です。矩形波間の時間を計測すれば誤差が簡単に計算できます。10秒での測定差が゛50m(ミリ)/sec以内になれば 誤差は0.5%以内となります。

TEAC X-10R のスピード誤差は±0.5%と記載されています。この数値でもって 測定した時間での許容時間を計算すると
1.905m×10(jマーキング位置)×10(カウント数)=19.05m  走行します。
+0.5%の時に走行する距離は  19.05×1.005=19.14525m 走行します。
基準値との違いは
19.14525-19.05=0.09525m となります。
これを時間に直すと 約0.5秒になりますので 10カウント の時間が100秒±0.5秒規格値になります。この時間内となるようにテープスピードを調整します。人間が測定しますのでこの作業を数回繰り返し測定誤差を少なくします。気の遠くなる作業です。このカウント数および走行距離で計算すると誤差の計算が楽になります。通常±2%誤差内であれば実用になります。別機種のデッキを使わない場合は 自己録音、再生するときはこれだけ シビアに調整する必要はありません。

PCの音楽編集ソフトデジオンで精密測定結果

テープで正確に1905mmごと3mm幅でマーキングした自作テープを再生し 記録したデーターグラフから パルスを10カウントした時の時間軸タイムチャートにより 100.373秒と計測できました。挿入した消去信号は約27Hzの信号としてきれいな正弦波波形とは異なりますが記録されていました。複数個所の測定で得られたデーター平均値での誤差は-0.37%であり小生のデッキでは30数年経過していますがテープスピード誤差は基準値の±0.5%以内であり優秀です。この数値でもって新規作製した3KHz副標準テープの校正ができます。このような計測ですと手動のストップウオッチより正確な計測ができます。最終的には作成しました副標準テープでもって調整しますと +0.05%までテープスピードは調整ができました。確認はデジオンのプログラムで精密測定しました。REVは若干遅くなっていますが誤差内です。FWDとREVではテープスピードは若干誤差があることが確認できます。テープの巻き始め巻き終わりでは小さなスピード誤差ドリフトも測定できましたが規格では3KHzに対して15Hz(変動率0.5%)以下であり許容範囲内に入っています。テープ走行位置での詳細のドリフトの数値も計測できます。このような測定で詳細データーが得られますが小生の耳での聴感上は正常?異常?状態は判別できません。精密測定結果により判断できる事柄です。

このようにして調整されたデッキで 今後のメンテナンスをするにあたり 副標準テープを作成しました。メーカーと製造時期の違いにより オープンリールテープの標準テープの基準となる周波数及びレベル値も異なります。今回は仮に400Hz,1000Hz正弦波信号(VUメーター-3dB)と10KHzヘッドアジマス信号(VUメーター-10dB)を作成しました。
(後日改めて 400Hz,1000Hz,3KHz,16KHz の副標準テープは用途ごとに 5号太ハブリールに巻かれたテープを新規作成しました)

仮の調整テープは 1000Hz テープスピード調整用と 400Hz VUメーター確認用とするため CR発振器の周波数誤差を周波数カウンターで測定しながら作成します。1000Hz精度は 1000.0**Hz ** しるしの桁暴れまで周波数を管理します。通常の周波数カウンターでは計測できませんが HPのフレケンシーマルチプライヤー HP5268 を用い周波数を1000倍した波形を 1秒間隔モードの周波数カウンターでモニターしながら仮の 副標準テープを作成します。CRオシレーター(AG-202A)の場合精度があまりよくありません。ドリフトが結構ありますので 随時周波数を微調整しながら作成しました。AH979Gでは精度、安定度はAG202Aに比べ良好な動作をします。

注釈 周波数カウンターの表示周波数は1000KHzとなっていますが マルチプライヤー(逓倍器)で1000倍にして測定します。故障ではありません。測定誤差の詳細を監視するためです。

副標準テープ作成にあたり デッキのテープスピード誤差が+1%であった場合は 基準発振周波数も+1%周波数を高く調整して記録すれば 誤差は打ち消され なくなります。逆の発想です。

1000Hz(1KHz)は 1000×1.01=1010Hz で録音します。
3000Hz(3KHz)を作成する場合は デッキのテープスピードが +1%が測定により判明していますので
3000Hz×1.01=3030Hz となります。

記録したデッキでは偏差が +1% ですので 作成したテープを再生すると 3030Hz となり 誤差が吸収された副標準テープが作成できました、副標準テープとして活用できるわけです。作製したテープ誤差を把握している場合には 誤差分を計算して測定すれば正規の調整として使用できます。
正規のBTSテストテープでは テープごとに誤差が記入された校正表が添付されます。

ちなみに TEAC X-10R ではテープスピード誤差が ±0.5% ですので調整数値としては 3015Hz~2985Hz の範囲となるようにテープスピードを調整すればよいわけです。;測定する測定器は ワウフラメーター 又は 周波数カウンターを用います。
+1%のデッキでは人間の耳はええかげんな物です。正常なのか異常なのか判別できる耳は小生は現時点では持っておりません。スピードが遅い場合と早い場合では遅いほど耳障りとなり聞き分けることができます。 +に調整すると違和感と感じにくくなります。感覚的にスピードが遅い場合は違和感と人は判別します。職人技の人間測定器では聞きなれた音楽の再生で+1.5% -0.5% までの精度でテープスピード調整が可能でした。体調により精度は変化します。最終的にはテストテープで測定します。過去にはテストテープを使わず調整できた時期もありましたが 現在は自己校正をした測定機器と作成した副標準テープを使って調整します。テープスピードが異なる場合でも同じように作成すればそのテープスピードの副標準テープが作成できます。

今回作成しました仮の副標準テープは TEAC X-10R で作成しました。テープスピードを測定しましたら ±0.5%以内でありテープスピード調整は実施していません。30数年経過していますが優秀でした。40年以上前に使用していましたデッキは SONY TC6635 3ヘッド・1モーター ハンドルレバーで動かすデッキと RD1400 1モーター・2ヘッド仕様です。その当時のテープです。SLHでバックコートテープを選別して仮の副標準テープを作成しました。 AKAI GX280D-SS のテープスピード調整はこのテープを使い時間短縮となっています。9.5cm/sec のテープスピード調整するときには 周波数カウンターで 500Hz  を測定します。念のためマーキングしたテープでは5カウントを計測します。
 
別テープに1000Hzをテープ巻き始めから終わりまで連続録音したテープを作成します。テープ走行位置違いによりテープスピードが変化していないかを確認するためです。測定結果大きなドリフトは確認できませんでした。

テープスピード調整は 3KHz のテストテープを使い カセットテープと同様にワウ・フラ メーターで調整したと思います。副標準テープを作成時に3KHzで作成すればワウ・フラ メーターを使用してテープスピード調整は可能です。
(後日 3KHz の副標準テープを作成しましたので ワウ・フラ・メーターを使って測定可能となっています)
X-10R テープスピード調整はキャプスタンモーター制御基板にある半固定抵抗で調整をしますが正確な数値を出すにはクリチカルな調整が必要です。

標準テストテープとリファレンステープについて


各VRの測定位置
正規のテストテープは 1/4インチテープ、フルトラックで 記録されており 正弦波ですので 正・逆方向からであっても トラック違いがあっても 測定可能なテストテープです。通常フルトラックを記録するデッキは市販品にはありません。しかもコピーができませんので 一本づつ作成されるため 高額となります。又リファレンステープも時代と共に テープの材質が変わっていきます。現在においては技術資料に記載されているリファレンステープも入手が難しく 手持ちのテープをリファレンステープとして調整するしか方法はありません。テープ種類により 歪率、出力レベル電圧が違ってきました。昔の特性の悪いスタンダードポジションテープ(Scotch 111)と呼ばれたテープはほとんど新品は入手ができないと思います。手持の無いスタンダードテープでの調整項目は必要でしょうか?

小生が所有しているテープは メーカーは異なりますが ローノイズ・ハイアウトプット・テープが大半です。バックコートは別として ローノイズテープ と ローノイズ・ハイアウトプットテープ に 二分されます。このことからテープ種類、メーカーにより各テープの最適なバイアス電流も異なり 周波数特性および出力電圧も 変化します。
どれでもって録音バイアス、周波数特性調整用 リファレンステープ、標準値 とするか ?  ・・・・  悩んでいます。

いろいろ調べましたらリファレンステープとしてよく調整用に使用されるテープは Ampex (Quantegy) 456 を使われるようです。現在新品のテープ製造は終了しており入手困難と思います。程度のよい 456テープが入手できた場合 ピークバイアス調整をしてテープによるバイアス値違いを実験する予定です。
今後新規に録音作業をすることは少ないと思います。技術資料が入手できていない事も含め 自己満足の無意味な悩みかもしれません。

DENON DH710S では 録音アンプ操作はある程度テープの性質、機器の動作原理など技術的知識がないと最大限の特性が発揮できません。レコーディング・エンジニアが扱うようなマニア向けデッキと思います。バイアス・EQ が使用するテープの種類により可変調整が可能な高級デッキです。小生の悪友である高級デッキコレクターもその人種と思います。悪友は現在多くのデッキ機器、真空管アンプなどは ほこりがかぶっていると思います。

しかし このTEAC X-10R では 汎用性重視のバイアス・EQは 2種類の切替しかできない構造です。

自己判断による 簡易レベル調整

今回レベル調整値は技術資料がないため 個人的自己判断 0dBm(0.775V) を基準として 400Hz正弦波信号 で各測定ポイントを ミリバルで測定しながら調整しました。VUメーター0dB位置でLINE出力端子レベルをカタログ値 0.45V/rms となるように調整しております。正規のVUメーター 旧BTS(JIS同等)規格の定義での0VU値は +4dBm(1.228V)平衡 600Ω負荷に並列とされています。このデッキでは単独のVUメーターアンプ回路で動作しており 別アンプによる不平衡ライン出力です。カタログ値は 0.45V 負荷インピーダンス10KΩ以上 と表示されており この数字が 0dB VUメーター表示値と解釈しています。0.45VをdBmで表示すると -4.5dBm ですので基準レベルが AKAI GX-280D-SS  と違い不明です。調整用模擬の信号源としては このデッキに dbx ノイズ軽減ユニットが接続できる端子があり 通常は短絡コネクターで回路を接続しています。再生模擬調整は 400Hz の信号でDECOD RCV 端子に -8.0dBm の信号を入力し アンプ部、 VUメーター感度を調整しました。又録音アンプへの模擬信号出力として LINE 入力端子に 基準信号を接続し dbx ENCOD SEND 端子で -8.0dBm  となるように録音ラインアンプおよび VUメーター感度調整を個人的判断で調整しました。調整前の各測定ポイントでの ミリバル.測定値を参考として調整しています。ノイズリダクションシステムは基準電圧が同じでないと圧縮・伸張作業での特性が変わってしまいます。その結果入出力レベルは同じでないと正常動作とはなりません。今回の調整レベルは正規の調整仕様とは違っていると思います。

上記の事柄は参考程度とご理解ください。
(後日BTSテストテープが入手できましたので調整作業は可能です。比較しましたが上記の調整で大きな誤差は確認できません。PLAYBACK レベル調整も微調整で完了しました)

dbx (ドルビー・ノイズリダクションシステムに似通った圧縮、伸張装置)ユニットの詳細なデーターがあれば 正規の調整値が判明すると思いますが 資料がありません。再生モードでは必ず出力VRは CALの位置で調整しませんと VUメーターは出力レベルと連動しています。 出力電圧値とVUメーター指示位置が合致しません。可変となりますので調整時には注意が必要です。
再生出力調整用テストテープは カセットテープ・ドルビーキャリブレーションテープと同じで 400Hz 0dB のテストテープで調整します。メーカーおよび機種により調整項目・調整周波数・レベルも若干異なっています。

当時は dbx ・Bタイプ ドルビー・スーパーD などが ノイズリダクションシステム として各社販売されていました。小生の好みとして申せば装置での コンプレッサー(圧縮)・エクスパンダー(伸張)動作がレペルにより加工作業が電気的に発生します。時によりブリージィング(呼吸)現象が発生します。違和感がある為 好んで使用はしていません。又録音時のレベルと再生時のレベルがテープ種類により異なります。レベルが異なる場合最終特性も変わってしまう欠点があります。装置を使うと S/N比 およびダイナミックレンジが拡大する利点はあります。ノイズリダクションシステムを使う場合は正確なレベル調整(基準信号のキャリブレーション)が必要となり 入出力レベルを合わせないと自然に近い音とはなりません。プロ・マニアでない限りこのような調整は通常されていないと思います。当時小生愛用のFMチューナーでは変調度100%に合わされた400Hzキャリブレーション信号を搭載していましたので カセットテープ録音時にはドルビー0VUキャリブレーションは実施しています。一部のテープではテープの初めに数秒間そのキャリブレーション信号が記録されています。FMチューナーは3メーター仕様でアナログ表示ですが 信号強度、FM検波センター位置、DEVATION MULTIPATH などが表示されます。BタイプドルビーNRではあまり大きくレベル変化が発生しませんが音がこもったような感じがしました。

今回表記しています 数値はボルトではなく **dBm の表示で記載しています。 **dBm  **dB 表記は基準電圧が違います。又ミリバルのボルト表示を記載していません。ミリバルの扱い方の説明は musenan06.blogspot.com  真空管式ミリバルの改修、考察のブログを参照してください。

調整箇所はは上記記載部分です。録音、EQアンプ、再生ヘッド、EQアンプは多数の調整箇所があり SVR、イコライザーコイル、バイアス調整コンデンサーなどが存在します。今回資料がないため正しい調整は実施していません。

カセットテープ用 標準テープについて参考記載

下記記載写真は カセットテープ用テストテープ(標準テープ) TEAC MTT-111N  3KHz です。下記テープを使いワウ・フラッターメーターを使用してテープスピードを調整します。テープ走行スピードとワウ・フラッターの試験です。周波数カウンターを使用してもテープスピードは調整できます。ワウ・フラ測定器ドリフト表示用のメーター指針を零に調整しますとテープスピードは標準値となります。他に ヘッドアジマス(角度)調整用 MTT-113CN 8KHz ・ MTT-114N 10KHz 上記記載などが存在します。主に10KHzはデッキの調整用として使用します。ヘッドアジマス調整作業は ミリバルもしくはオシロスコープ波形を観測しながら調整。機器により  ドルビー・キャリブレーション標準テープ MTT-150 を使って カセットテープデッキは検査・調整をします。これらの総合試験に合格しませんと 他機器との互換性が取れません。又生テープの種類も数多くありノーマルテープ C-60 以外に オーディオ用としてフェリクローム・クローム・メタルテープなども販売されていました。各社製造メーカー製造時期により多種類の調整用リファレンステープが存在します。今日ではどのテープでもって どれを標準とするか もしも修理する場合は悩みます。

もうしばらくはカセットテープ用テストテープ類は廃棄せずに部品保管棚に居候となります。


コンパクトカセットテープ C-60 の規格は 1/8インチ(3.175mm)テープ幅 テープ厚み 16ミクロン(μm) テープスピード 4.7625cm/sec の規格です。片道30分、往復60分となっています。テープの長さは約90m(85.725m)と計算できます。オープンテープと比較すると大きな規格違いが判ると思います。現実はテープ幅(3.81mm)であり1/8インチよりは少し幅が広くなっています。  長時間用として厚みが11.2ミクロン,8ミクロンのテープも販売されていますがテープが非常に薄くメカニズムの不具合による事故確立も高くなっています。オープンリールテープ150番タイプではテープの厚みは35ミクロンですがカセットテープC-60では半分以下の16ミクロンでありテープが非常に薄いことが判ります。

特に乾電池で動作するようなメカニズムですと モータートルクが弱く テープ走行位置でテープスピードが変化します。(ドリフト状態) テープ走行位置によりテープスピードが2%程度変化する不安定動作をする機種も存在します。聴感上騙しとして テープ中央あたりで + のテープスピードに調整します。ウオークマンタイプのヘッドホンプレーヤーなどが該当します。オートシャットオフ・オートリバース機能がメカニズムで制御され構造も複雑になりました。
コンパクトカセットの場合は 巻取り(テイクアップ)トルクは35g~50g程度であり バックテンションにより回転ムラが顕著に表れます。オープンテープデッキと違いテープスピードも遅く テープ幅が小さくテープ厚みも薄いため C-90 以上のテープではクラッシュ事故確率が高くなっています。モータートルクの小さいことを含めメカニズムの調整はシビアな調整が必要です。テープ走行スピードにドリフト症状が顕著に表れるため注意深く点検をしなければなりません。通常 C-60 までのテープを使用することをお勧めします。事故確率が低くなります。ピンチローラーおよび圧力、キャプスタン軸の清掃、巻取りトルクを重点に点検しなければなりません。C-120 のテープではテープエッジがワカメ状となる症状で テープパスが狂っていると不良となる故障もあります。

カセットテープレコーダーが開発された当初テープスピードが遅く音質も悪いですが 語学教育用として乾電池、ACアダプターで動作するテープレコーダーが製造販売されました。その後 AM,FMラジオ付の通称 ラジカセ が爆発的にヒットし レコードを購入しないでラジオ放送の音楽を録音する人種が増加しました。ひも付きのダイナミックマイクロホンから本体内蔵エレクトレットコンデンサーマイクに付属品も変わりました。それと並行してカセットテープのステレオ化が進み モノラルとのコンパチビリティーがよく 録音されたテープおよび再生する機器が違っても問題が発生しません。音質の悪いカセットテープを HI-FI音 に近づけるため機器製造メーカー・テープ製造メーカにおいて 数多くの事柄が改良、改善され実用化されました。その影響でオープンテープデッキが衰退しています。カセットテープでも 3ヘッドデッキが開発され カセットの基本規格を変更しないで 3ヘッドが構成されました。のちにはオートリバース録再機も製造されています。又8トラックテープはカラオケ用として生き延びています。

オープンテープデッキと比較すると周波数特性およびワウ・フラッター特性も悪い数字です。しかし使い勝手が良いため全世界に普及し当時日本の外貨獲得に寄与しました。


今回録音・再生調整に必要な測定機器類の話です。


上記測定器は 歪率測定およびレベル調整用基準信号正弦波発振器(オーディオCRジェネレーター)で シバソク製 AH979G 連動歪率測定器 です。機器内にはACミリボルトメーターも内蔵されています。テープに記録された正弦波信号の歪率が測定できます。ゆえにデッキの周波数特性および歪率の調査が可能です。発振周波数は 20Hz~200KHz の間、任意で低歪率正弦波が出力でき歪率も測定できます。
2連バリコンの使ったCR発振器に比較して ロータリースィッチで周波数を変化する回路構成により使用している部品も精度も高いCR類を多数使用しています。CR発振回路での周波数のドリフトは少なく出力レベル変動しにくい構造です。長時間安定した正弦波を出力をします。手持ちにあると便利な測定器です。又発振周波数微調整つまみも取り付けられており ドリフトによる調整も簡単に操作できます。

X-10R のサービスマニュアルが入手できていませんので入手しました X-1000R 英文サービスマニュアルを参考に調整作業を進めます。

自己判断による 簡易調整


簡易調整は dbx装置入出力端子から ラインアウト端子、マイク入力、ライン入力までの回路を調整しております。通称 録音・再生 ラインアンプ、メーターアンプ と呼ばれる部分です。ラインアンプの周辺回路として VUメーターアンプ、ヘッドホーンアンプとメインのラインアンプが各、右・左が 1つのICに集約されています。 IC名称は HA11122W のICで 汎用カセットデッキの録音再生回路ICです。マイク入力ソケット部に マイク初段アンプがあり ライン入力とマイク入力が トランジスターミキサー回路で調整した信号を REC,VUメーター感度調整、dbxエンコード出力端子へ レベル調整した後 dbx端子基板内の2段直結アンプで増幅し dbxユニットへ送出します。通常は接続ピンで録音回路へとつながります。VUメーターは出力レベルoutputVRとは連動していません。REC,VU PLAY,VU 単独で調整します。しかしRECライン出力はoutputVRで調整できます。
再生系は ヘッド2段直結アンプからdbx端子基板内2段直結アンプで増幅後 dbxデコーダー出力しますが通常は接続ピンにより ラインアンプを経由してライン出力となります。VUメーター感度は出力レベルoutputVRと連動しており 重複説明となりますが CAL の位置がVUメーターの正常動作値ですので調整時にはVR位置3時に注意してください。OUTPUT VR 最大の位置5時では 1V/rms 程度の出力値となります。

現物基板から作成した回路図・ブロック図とX-1000Rサービスマニュアルで調整箇所が判明しました。参考程度とご理解ください。間違っている可能性もあります。今回調整しました主要箇所のVR番号は

VUメーター感度調整       REC R371,R372  P,B R389,R390 0VU adj
OUTPUT レベル 調整     R403,R404   PB,LINEamp gain adj  (RECmonitor LINEoutと共用回路)
PLAYBACK レベル調整    FWD R313,R314  REV R315,R316 HEAD,P,Bamp gain adj
REC dbx outレベル調整    R369,R370 REC,LINEamp gain adj
RECレベル調整         FWD R429,R430  REV R431,R432 HEAD,RECamp gain adj

  (HEAD,PBamp gain についてはテストテープが無いため正規の調整はしていません。各ヘッドの出力バランス調整のみです。視覚上メーター指針位置狂いの補正です。過去に録音したテープ再生でのVUメーター表示狂い修正程度です)

その他多数EQ・バイアス調整箇所等がありますが 資料がないため全数は調整していません。VR調整する前には必ず調整前のVR調整位置を記録してから調整してください。もしも間違って調整した場合元の状態に戻すためです。出荷時に比較して 故障、ヘッド摩耗等がなければ 大きなずれはないと思います。もしも調整する場合はVR可変範囲は少なく、微調整してください。測定機類も使用前には校正されたものを使用してください。測定器がくるっていると規格値との誤差が大きくなります。メーカー調整とは異なり 趣味・道楽での自己満足調整作業です。

回路動作の理解・測定器もなく無秩序な調整はご法度です。

このような調整・修理作業をしますと メーカーサポート及び修理依頼することができません。くれぐれも自己責任で作業してください。


TEAC X-10R 個人的解釈による完成


色々横道にそれながら記述していますが 一応 TEAC X-10R 作業目標である項目については修復が完了しました。以後録音する場合でも過去から保管してあるテープでしか録音することができません。このあたりで 自己満足の作業を終了します。EQ・バイアス回路の調整箇所は 大きなずれが無い と判断し資料も無いため細かな調整作業は実施していません。又周波数特性・レベル調整などの時間がかかる測定・調整作業は一部省略しています。過去に録音しましたテープをデジタル変換が可能なレベルになりました。現物基板から回路図を起こして修復・調整を実施した関係で 長期間にわたる作業内容となりました。

写真の自動歪率計目黒 MAK-6571A は製造ライン検査用の測定器として多くの企業で採用された測定器です。入力電圧が左側のメーターで 0dBから-10dBの範囲内に10dBごとのセレクター選択で 正常な歪率が測定できる測定器です。シバソクの AH979Gのように測定に必要な細かな入力電圧調整・CRバランス調整の必要がありません。専用フィルタータイプの歪率計です。
今回作成しました自己録再・副標準テープでの 0dB 400Hzの信号では 歪率 0.4% を観測しました。同じく1000Hzでも同じ歪率0.4%を観測しました。オーバー録音した場合 聴感上歪として判別できるレベルまでは余裕があります。自己修理・調整・点検用として 副標準テープを所有測定機器を使って作成しました。作成のために5号太ハブリールに巻かれた MAXELL Professional Master Tape PM50-5LB の生テープを多数入手しました。このテープを使って 400Hz0VU,1000Hz0VU,3KHz-3dB,16KHz-10dB, 19cm/sec のテープと 3KHz-3dB 9.5cm/secのテープを各用途ごとに新規作成しました。

現物基板、配線から作成しました汚い手書き資料は A4 20ページほどの資料となってしまいました。修復作業においては ブロック図・系統図があれば信号の流れが把握でき ディスクリート、アナログ電気回路故障は修復できます。又調整用テストポイント、調整箇所も把握理解することができます。現在入手したいものはサービスマニュアルと 基準値 0VU(0dB) 400Hz のテストテープです。初期性能の維持には必要と考えています。昔からの経験による記憶と薄学な知識によりどれくらいの精度で今回調整できているかは疑問として残っています。今回システムコントロール回路は汎用ICでしたので検索の結果 回路動作はある程度は理解ができました。カスタム・マイコンを使った回路ではマニュアルがないと簡単には修復できません。
X-10R サービスマニュアル入手については海外サイトにアタックしましたが現在入手できていません。
経年変化で本体パネル取り付けM4六角ねじ10本とキャビネット取り付け用M4ねじ8本は錆が発生しており 今回お化粧直しのため ステンレスねじに交換しました。ヘッドカバー取り付けねじ2本は特殊ねじであり一般市販品には見つけ出せることができず さび落とし溶剤を使い研磨後再使用しています。多少美観も心得です。ねじ類は安価なものを使っているようです。

上位機種である dbxユニット搭載 X-1000R,X-3R 英文サービスマニュアルは最近海外サイトから入手しました。X-10R とはほぼ同等動作と思いますが下記記述は 参考程度とご理解ください

テストテープ内容詳細
YTT-1003 ヘッドアジマス 16KHz    VUなど 0dB  400Hz   周波数特性 40Hz~22KHz 19cm/sec
YTT-1002  周波数特性 40Hz~14KHz 9.5cm/sec
YTT-2003  テープスピード 3KHz   19cm/sec
YTT-2002  テープスピード 3KHz   9.5cm/sec
YTT-8013  録音再生テスト用リファレンステープ

上記のテストテープがデッキ調整には使用します。TEAC専用であり一般市場では通常簡単に入手できないテープです。リファレンステープについても テープメーカー名称・品種が記載されていません。ゆえにリファレンステープを手持テープの中から何とするか? 悩んでいる理由です。

メカニズムオイル
TEAC spindole oil (TEAC TZ-225 oil kit)  Mobil D.T.E oil Light  1000hours  tension roller  guide rollre  pinch roller  capstan
とサービスマニュアルには記載されています。グリス品種の記載はありません。

0VU 再生レベル  カタログ値 0.45V/rms(-4.5dBm)    サービスマニュアル  0.436V/rms(-5.0dBm)
と記載されており 0.5dBの誤差があります。0.5dBは誤差の範囲内と考えています。

BTS規格のテープについて
BBS低雑音 REFERENCE TAPE

BTS5313 T19 TEST TAPE
最近オークションで BTS規格のテストテープ及びリファレンステープが入手できました。製造後40年ほど経過していますが 校正表も添付されており TEACのテストテープが入手困難であることを含め 自己で作成した副標準テープを校正するために購入できました。現物確認では使用頻度が少なくテープはフルトラックで録音されています。自己で作成しました副標準テープと比較しましたが 作成しましたテープとは数dBの誤差がありました。BTSテープ入手前に作成したテープですので最初の基準レベルが多少違っていた理由です。ほとんど誤差がありません。(数dBは誤差の内)BTS標準テープも作成されてから長期間経過しています。多少マイナスにレベル変動があると判断しています。古いものですので100%は信用していません。数dB誤差微調整のため 新規USA製 MRL 基準テープ約2.5万円は出費できません。目標である極力費用をかけない小生道楽範囲での修復とします。

現在はBTS規格としては存在していません。2001年7月に廃止されました。昭和の時代・アナログ全盛時代は過ぎました。やはり時代変化による一つの節目ですね。

骨董品のデッキ修復においては基準となるものが必要です。年代物の標準テープですが 放送局の放出品と思われます。実際にデッキでテストしましたが TEACの標準テープに必要な信号は記録されています。プロユースであれば一定期間経過すれば廃棄となる高額なテストテープですが道楽で使用するには 現在でも活用できると思います。
テストテープ製造者は 電波技術協会と記載されています。協会の理事などの主要メンバーを確認いただければどのような組織か理解できます。放送局などに対して 指導、助言できる 一般財団法人です。某組織などの・・・・・・・先です。
テストテープのテープ製造元はScotchと思います。7号リールに巻かれたテープであり アセテートベース50ミクロンです。たぶん Scotch111 と判断しました。同じ規格のポリエステルベーステープのテストテープも入手しました。リファレンステープは低雑音用(ローノイズ)であり 同じくポリエステルベース50ミクロン・バックコートが施してありますので Scotch206,JMT3100(放送用)  と類似していると思います。3本のテープ両端はリーダーテープがスコッチ模様ですので磁気テープは間違いなくスコッチ製と思います。信号が記録された部分は数分から10分未満程度であり 後はダミーの安価な生テープが巻かれています。
副標準テープを作成

準BTS規格と思われる BSS低雑音用リファレンステープを用いて自己所有デッキのバイアス調整しましたが 予備機のバイアス電圧に似通った数値となりました。
参考記載 BIAS-1  FWD 14.8V,13.9V   REV 15.0V,14.0V

リファレンステープの最初には 400Hz 0VU信号が 19cm/sec38cm/sec フルトラックで記録されています。後半はリファレンステープ部で周波数による偏差も校正表には記載されています。価値の知らないものであれば塵・クズですが 小生にとっては 掘り出し物 お宝テストテープです。リファレンステープ(REFERENCE TAPE)は日本語表記では 磁気録音基準テープ、テストテープ(TEST TAPE)は 録音用標準テープレコード と保管箱に記載されていました。

テープデッキ調整項目の中にヘッドアジマス調整と高域信号チャンネル間位相調整がありますが 自作した副標準テープでは位相調整はできません。調整はフルトラックで記録されたテストテープでしか調整できません。オシロスコープをベクトルスコープポジションとしてH,V入力端子にL-ch,R-ch信号を接続します。円形のリサージュ波形により高域チャンネル位相を合わせる作業です。詳しい測定波形状態は正弦波リサージュに関する教本などを参考としてください。位相が90度の場合は円形となりますが 位相差が0度の場合は右肩上がりの直線となります。再生ヘッドのアジマス・位相調整信号はテープスピード,19cm/s,16KHz,-10dBのテストテープ再生において位相ずれは45度以内の規格です。

BTS規格テストテープ入手によりサービスマニュアルに記載されている調整項目も調整可能となりました。


リファレンステープとしてく使われる  Quntegy 456
テストテープには食品に似通った消費期限があります。なぜかというと録音テープは小さな磁石の集合体です。録音により新しく音声信号により多数のN,S磁石が記録されますが この記録された小磁石が 自己減磁作用 などにより時間が経過すると磁力線が弱くなる性質があります。これがレベル低下となるわけです。ゆえにプロユースでは基準となるテープは一定期間経過すると廃棄となります。古いテストテープでは基準レベルが狂っていると解釈しなればなりません。これらを踏まえて使用しなければなりません。ただ記録された周波数は変化しません。古いものでも誤差を校正すれば使用することはできます。校正する基準を探すのに苦労しています。

録音された磁気テープは経年変化で劣化します。VTRのテープも同様ですが 再生できる機器が正常動作している間に デジタル変換しませんと 機器にも寿命があります。機器が正常に動作している間に自家用の大切な録音(録画)テープは早い目に現在の媒体に変換する必要があるわけです。レコード会社、放送局ではもうすでにデジタル変換していると思います。大量のテープライブラリですから。今後どのような記録媒体が開発されるか予想ができません。楽しみですが ! ! !  録音テープは書籍・絵画などと違いアナログ録音磁気テープは数100年も保存保管できないと思います。テープ再生装置もSl機関車のように動態保存・保管が数百年以上できるでしょうか? どこかの博物館あたりで動態保存費用も発生すると思います。記録された磁気テープは再生装置がないとただの塵と同じテープになっていしまいます。
40年ほど前に作製された4Chミュージックテープも保管してありましたが テープ最初に記録された各チャンネルごとの正弦波レベル調整用信号は当時再生したときのVUメーター表示レベルより 数dB低い値を表示します。自己減磁作用およびテープの劣化・経年変化が確認できました。磁性体の剥離などもあり テープ自体の特性はよくありません。当時レコードよりもミュージックテープは高額でした。
古い録音テープでも新しく録音すれば 物によっては再使用できるテープも存在します。見極めるのが大変です。テープ製造メーカーにより品質は違っています。どこのメーカーのどの品種が品質が悪いかは記載しませんが バインダー技術などの技術力の差が長期間経過したテープで歴然と判明します。
カセットテープにおいても当時テープ鳴きが発生し 某メーカー製テープはその後一切購入しませんでした。オープンリールテープでもテープ鳴きが発生しやすいテープ種はある程度存在します。テープ鳴きテープはデジタル化するときには苦慮します。

腐っても鯛は鯛 のことわざがありますが 賞味期限が切れている プロ・ユース正規テストテープが入手できました。一般市販品 民生機器用とは多少相違があると思いますが マニュアルに記載されている調整項目が正確に調整可能となりました。時間つぶしができます。骨董品デッキ・骨董品測定機器による 自己満足の総合調整です。

今回の総合調整の中で個人的解釈ですが試行錯誤の結果 リファレンステープを maxell PM50-5lB を使用しての録音・再生調整となりました。VUメーター 0dB 入力に対し 出力レベルは同じ数値となるように調整しました。多数のテープでもってピークバイアスからオーバーバイアス-3.5dBに調整をしましたがテープ種によりバイアス電圧は異なります。比較的製造後新しい使用頻度のすくないテープを選別しました。Quantegy456は+2dBほどレベルが高くこのテープで調整すると数多くの手持ちテープが使いにくくなります。購入後30年以上経過したScotch207のテープでは-3dB程度感度が悪いことが判明しました。あとは録音テクニックで歪率を確認しながら録音すれば゛実用になることになります。おかげさまで FWD,REV ともレベル・チャンネル差がなくなりました。バイアスは FWD14.5v,14.0v REV13.7v,15.5v の目安数値です。

maxell PM50-5lB(Professional Master Tape) などの同規格品はプロユース生テープですが 新品などでも現在比較的簡単に国内で入手できます。7号、10号リールに巻かれたテープでも同様に使用できると思います。

自己所有 X-10Rのデッキは長期間約25年以上放置状態で推移しています。ブランク期間ではオープンテープ生テープもEEポジションテープを含め多種類新製品もあり浦島太郎状態です。最近比較的製造後新しいQuantegy(Ampex) 456 10号メタルリールテープ未使用新品を入手しました。新しく音楽録音しましたが 小生が常用で使用していた時代のテープより特性がよくなっています。新しい生テープではヘッド・ガイド金具・ピンチローラーなどは汚れにくくなっています。又3Mスコッチ製のタイミングマーク入り新品同様のリーダーテープ7号リール巻きも入手できました。必要な時にはなかなか見つかりません。入手後マーク寸法を測定しましたらほぼ正確な数値でした。傷んだ古くから保管しているテープの修復作業にも活用できると思います。そのあおりで懐が寒くなりポケットマネーが減少しています。
目標である極力費用が発生しないように修復とはなっていません。一番高額出費は予備機で購入したデッキです。性格上妥協せず深追い追及した結果です。X-10Rは2台とも試行錯誤の結果 測定・確認・調整するための治具作成・工作などで長期間に渡る作業でしたが 道楽での修復調整作業ですが 自己所有測定機類で確認の結果 初期性能がほぼ得られたと判断しています。物を捨てられない症候群そのものであり狭い部屋にデッキが増殖しています。新規購入は修復調整に必要なベルトを含めBTSテストテープ・生テープなと小物購入が多数となりました。同じX-10Rであれば電気回路・調整ポイント及びメカニズム構造が理解できましたのでエージング作業は別として短時間で修復・調整作業が可能となりました。

このブログ(忘備録)ではファイルが大きくなり編集に支障が発生しています。詳細の修理・調整編として別ブログを立ち上げています。興味のある方は下記のブログにジャンプしてください。
musenan09.blogspot.com

引き続き AKAI GX280D-SS 4チャンネル オープンテープ・テープデッキの修復調整の項目に進みます。

AKAI GX280D-SS の修復

TEAC X-10R と平行して AKAI GX280D-SS の修復作業を実施しました。やはり製造後40年弱経過していましたので 総合的に ガタ がきています。サービスマニュアルについては海外のサイトで 英文の技術資料が公開されており 自分なりの翻訳、解釈をしての修復作業となりました。まずは TEAC・ AKAI どちらかのデッキがある程度の品質で録音再生できるように と 修復しました。メカニズムのオーバーホールはは比較的簡単に修復は完了できました。ただピンチローラーのゴムに劣化があります。部品はありません。何とか実用になるレベルの劣化でしたので ゴム表面の清掃で騙しています。現在AKAI本体は事実上解散しており アフター部門が別会社を設立しいましたので 部品在庫等の確認および相談はしていません。

しかし 思惑ははずれ 電気回路が思っていた以上に ゴテ となりました。難物となってしまいました。

ある程度回路図により動作内容は理解ができましたが 修理に手間取ったのは ランダム雑音の修理です。

結論から先に 記述します。4ch,2ch 切替のリレー接点で 接触不良となり 接点部でランダム雑音発生が原因でした。同規格のリレーは手持ちがなく 手持ち在庫分産業用の機械設備に使用する DC12V 1回路2接点の汎用リレーを2個使用して修復しています。不良であったリレーの仕様は DC24V 励磁コイル抵抗値は1000Ω 2回路 2接点のリレーです。リレー接点は密封型の構造と違い 経年変化に伴い 接点部の酸化現象によりマイグレーション現象のような故障となり 雑音が発生する故障と判断しています。

このテープデッキは 1/4インチテープ 4トラック 4チャンネル仕様のデッキです、各チャンネル独立した 録音アンプ、再生アンプを搭載していますが 2チャンネル録音・再生モードではフロント部だけ動作すれば 2チャンネル仕様となります。消去ヘッドは 4トラック2チャンネル専用ヘッドを使います。4チャンネル録音時は専用のフルトラック消去ヘッドが動作します。

4トラック 2チャンネルモードリバース再生時は ヘッド切替リレーでヘッド信号ををコントロールしています。4チャンネル動作時には 2トラ38のデッキのように テープはマスター巻きのテープ状態で使用します。2チャンネル再生時のみリバース再生が可能なため 使われるヘッドを選択しなければならない構造です。 4チャンネル動作時にはヘッドの上から トラック1、トラック2、トラック3、トラック4の順番に配列してあります。チャンネル別のトラックでは フロント左はトラック1、フロント右はトラック3、リアー左はトラック2、リアー右はトラック4 以上の仕様で動作します。

これらの仕様により2チャンネルリバース再生の時には 再生回路ヘッドアンプは トラック 4が左、トラック 2が右 各チャンネルとして動作します。しかし再生ラインアンプはリアー回路をそのまま使用すると フロント左、右のライン出力端子に出力されません。ゆえにフロント左、右回路にリアーの再生ヘッドアンプの信号を 故障したリレーで切り替えていたわけです。

交換しましたリレーの仕様は DC12V 400Ω の規格で 1回路2接点です。今回代用品として DC12Vリレーを使用しました。リレーの励磁コイルは直列接続として使用します。直流抵抗値 1000Ωに比較して代用品のリレーの直流抵抗値は 800Ωとなります。DC24V 800Ωのリレーとなり 代用が可能と判断しました。接点部も密封された構造での動作となりますので 接点表面の酸化現象は少ないと思います。プリントパーターンに合いませんのでリード線を加工して修復しました。

この故障原因が判明するまで 再生アンプばかりを点検していました。フロント、リアーごとに2チャンネル分の回路がプリント基板に搭載されています。基板がソケット仕様で構成されているため 動作中に各回路を点検するには ゲタ基板がない限り チェックするのに苦労します。前項目で記述しましたように 使用されているトランジスター(2SC458LGC)のリード線が黒くなっています。最初はトランジスター不良と思い込み 交換すれど直らず。基板を抜き差ししながら 他の回路部品も基板単体で点検しました。効率が悪く点検作業に手間取っていました。フロント、リアーの基板は同じ作りです。入れ替えても症状は変わりません。順番にほかの回路を点検した結果 犯人が判明した経緯です。
作業中 電解コンデンサーの逆付けミスを犯しました。漏洩電流による雑音が発生しました。修理者がこしらえた故障原因は簡単には修復できません。コンデンサーは良品である と 思い込みの結果です。頭を冷やし 違う角度から点検を繰り返しして元に修復することができました。無駄な時間を消費してしまいました。

最終的には トランジスター・電解コンデンサーの無秩序な部品交換作業となっています。某メーカーサービス員と 変わらない修理方法でした。後日 各部品の単体チェックをしましたが極端に特性の狂った部品は発見できません。ほぼ良品ばかりです。

ACモーター回路・リレーシーケンス回路の故障・修復
次にメカニズムに関連した電気回路故障箇所の修復です。

前項で 述べましたが 以前発煙故障した部分の修復と 周辺回路部品の点検です。以前故障した部分は どのような動作の回路であったか?
 今回サービス技術資料が入手できたため 回路動作が判明しました。以前の修復箇所は MPコンデンサー0.1μF 300VACのコンデンサーと直列に接続されている 120Ω 1/4W 抵抗の焼損でした。今回回路図で確認すると ACキャプスタンモーター 正回転。逆回転切替接点に接続された スパークキラー回路の部品でした。現在の部品では複合型のスパークキラー(100Ω+0.1μF)として部品は存在します。

キャプスタンACモーター用発煙故障原因は 0.1μF・MPコンデンサーの短絡故障により直列に接続した抵抗に大きな電流が流れ 故障したと判断しました。

同様にマイクロスイッチ接点に取り付けられたMPコンデンサーもパンク状態であり 全数交換しています。又マイクロスイッチ単体の時々接触不良も有り交換しました。

数箇所同じような部品が使用されていたため 点検しますと 容量値が異なりますが 同様のパンク故障が確認できました。写真のようにパラフィンのようなものが シャーシーにコベリ着いています。目視点検で発見できます。

キャプスタンモーター回路では 0.47μF 進相コンデンサーも1個パンクしており 2個ともフイルムコンデンサーに交換しています。

円筒型のコンデンサーは点検しましたが正常と判断でそのまま使用しました。

メカニズムの油切れなどが確認できており メカニズムの分解・注油オーバーホールの結果スムーズな動きとなりました。ACモーター回路・メカニズム制御回路の電気部品交換点検も終わり 次工程電気特性の点検を始めます。

テープスピード点検

TEAC X-10R で作成しましたテープスピード測定テープを使用して 調査しますと 19cm/s で -2%が計測されました。

サービス技術資料の調整方法を確認しますと まずは 9.5cm/sec テープスピードを調整します。キャプスタンモーター回転制御基板の付近に別付された シールドケース内の 発振コイルを調整します。調整後 19cm/sec調整は  基板にあります 半固定抵抗の調整と明記されていました。

現在においては コイルのインダクタンスを調整する ダストコア調整棒プラスチック製六角調整ドライバーは 工具箱を探索しましたが見つけ出すことができません。 何処に格納したのでしょうか? 行方不明です。

今更運賃を出して電子パーツ屋に出かける気力もありません。販売していないかもしれません。鉄製の六角ビスを回す六角レンチが寸法が合いました。コイルのダストコアは壊れやすく レンチが鉄製ですので コアの材質と似ているため 調整には見込みを甘味して調整しなければなりません。何とか調整をしながら 作成した副標準テープを 9.5cm/sec で走行させ 周波数カウンターで 500Hzに合わせます。調整後 マーキングテープ走行で ストップウオッチを使い5カウント100秒との誤差測定をして確認しましたが 誤差が±0.5パーセント以内に調整となりました。副標準テープは精度がでている事が判明しました。
(後日プラスチックの六角調整ドライバーはパーツ棚から発見しましたが 時はすでに遅しでした)

次は 19cm/sec の調整です。調整用のSVRは基板の奥側にあり 他の部品により 調整用ドライバーを挿入することができません。裏側を確認するとフレーム鉄板が邪魔をしており 同じくドライバーが挿入できません。メーカーでは どの様にして調整したのでしょうか?   SVRは壊れやすく 一直線上にドライバーを挿入しなければSVR破損も考えられます。SVRの取り付け位置の寸法を測定し シャーシーに10mmの穴を開けて対応しました。おかげさまで竹箸改造品の調整ドライバーでSVRを壊すことなく調整が完了ししました。周波数カウンターでは 1000Hzを調整。その後10カウント 100秒測定での誤差測定をしましたが規定値に調整されていました。

キャプスタンモーターは 逆転可能な FG制御(アウターローターに歯車状のギアと磁気ヘッド)、基準信号はLCによる発振回路 ACサーボ ダイレクトドライブ アウターローターモーターを使用しています。テープスピードの誤差発生は サーボ回路のLC発振による基準信号の経年変化と判断しました。-2%誤差でしたので コンデンサーなどの精密容量測定は実施していません。テープスピード切替は ACモーターの電磁極・磁極数を変えてコントロールしていると思います。

両スピードとも メーカーのスペックの ±0.5%以内に調整が完了しました。ちょっと甘いスピード誤差は *1.0%・-.0.5%の表記もありました。 とりあえず +の調整として完了。
TEAC X-10R で副標準テープを作成した結果 今後テープスピード確認・調整用テープとして活用できることが判明しました。

メカニズムについてもほぼ正常に修復できたと考えています。後は電気特性の試験ですが 当時の4チャンネル ミュージックテープを再生しましたが 違和感とは感じられません。当時の生テープを使って録音再生しましたが 出力レベルが録音時のレベルと比較して再生レベルは5dB前後低い値です。目視確認できないフェライトヘッド摩耗が原因かもしれません。録音バイアスまでの調整は実施していません。後日BTSテストテープが入手できましたので再生系・VUメーター感度調整は比較的簡単に調整できています。現実には 4チャンネル録音することは無いと思います。再生プレーヤーとしてはほぼ満足な動作をしています。道楽作業の自己判断により修復完了とします。新たにテープに録音する場合は TEAC X-10R が修復完了していますので 今回細かな調整は実施していません。リファレンステープは富士フィルムを使っての調整項目が 資料には記載されていました。現在ほとんど入手ができないと思いますので 手持ちのテープを使い そこそこの品質で 録音・再生ができましたので 自己判断 修復完了としました。


両デッキともテープカウンターについては不安定な動作をしていました。カウンターに引っ掛かりがあり 桁数が変わるときに止まってしまいます。カウンターの各隙間清掃および隙間から 微量の注油作業で修復できました。X-10R は カウンターベルトの伸びがあり 直径2.5mmバンコード丸ベルトを使用してベルトを作成しました。

バンコードを使った 丸ベルト作成方法については 別ブログ denondcd-3500g.blogspot.com  を参照願います。工作治具の作成および融着(溶着)作業方法について記述しています。興味のある方は参照してください。


まとめ

過去の遺物である オープンテープデッキの修復が終了しました。完成度は自己満足のレベルです。この数十年はここまで徹底的に分解調整作業は実施していません。真空管アンプの 工作、修復と異なり 半導体回路、システムコントロール回路を悩みながら修復しました。真空管アンプには無い作業内容です。30年~40年以上経過した商品を復旧するに当たり 現在の部品で修復する場合は 部品レベルでの構造の理解および特性を知らなければ 安全に代用使用することができません。若かりしころの機器が蘇りました。当時の音響システムの完成度が判ります。アナログですが優秀です。現代システムにはない環境であり その時代の音源で音楽鑑賞ができます。

今回の忘備録作成において記述しています項目は記載した時系列がずれています。凡人作成の記述ですのでご勘弁ください。各項目についても思い出した事項を追加記載しているからです。表現がおかしく感じられると思いますが愛嬌とご理解ください。過去からの経験・記憶を実験・記述した結果です。随時思い出した事柄については気が向けば追記させていただきます。

現代の小型複合システムに比較して 当時のシステムの音質のほうが良いように思います。現代の若者が経験したことのない音質で再生されます。現代の機器は電気楽器およびデジタル音源の音楽再生にチューニィングしているようです。昔で言われるドン・シャリ再生に近いと思います。グラフィックEQ・スーパーウーハー使用で アコースティクな音楽には向きません。年寄りの僻みでしょうか? 感覚の時代差を実感しました。加齢とともに耳で判別できる周波数域が低下します。年寄りの屁理屈評論家様のオーディオ機器ではなく 耳で判別できる周波数特性を測定したくなります。現在高域成分である テープ・ヒスノイズ、アンプからのショットノイズ・ホワイトノイズなどは若かりし頃に比べると判別しにくくなっています。オーディオ機器の特性だけでなく 自分の耳での周波数特性も調査されたらいかがでしょうか? 実測すると昔聞こえていました 15,734Hz FBTの音が聞き分けることができません。歳は取りたくないと思いますが自然には逆らえません。

以前は周波数カウンターの校正作業は NTSC方式のカラー信号復調に使用します 3.579545MHzのカラーバースト信号からのCW波形で調整していましたが テレビもデジタル化となり その信号も活用できなくなりました。今後校正作業をどうするか? 思案中です。ルビジウム10MHz発振器購入も視野に入れて考えています。道楽で収集した骨董品測定機類の自己校正作業において正確な標準器・基準となるものを探すのに苦労しています。基準になるものが無ければ比較・検討ができません。又測定機器が狂っていれば正確な調整作業もできません。
今回ラッキーなことにオープンテープデッキ調整には欠かせないフルトラック記録BTS規格テストテープが入手できました。基準信号です。骨董品かもしれませんがプロ・ユースとは異なり 道楽で使用するには活用できると思います。現在ではアメリカから輸入品のテストテープを扱っている会社がありますが 2~3分記録されたテストテープは数万円します。プロ・ユースとは違い自己満足の道楽では高額ですので簡単に購入できません。

その他ガラクタと判断される骨董品も多数所有していますが 物を捨てしられない症候群のそのものです。諸先輩のような良い耳は持っていません。道楽での先生と呼ばれる方のように高級品・新製品は金銭的に余裕がないため所有したくとも購入できません。凡人ですが骨董品機器は 修復・実働するように努力しています。

今回の修復に際し 誰でもできる作業とは思っていません。多少の知恵袋になればと思い記述しました。近年ソフトばかりが進捗し 電子工作などハード面に興味を持った若者の数は減少しています。理系離れが加速しています。これが技術力の日本ですか。壊れれば即買い替え 古いものを愛着を持って使用する人たちが減少しました。又携帯電話・スマホ症候群がはびこっています。携帯電話・スマホ・タブレット端末がないと不安感となり 落ち着きがありません。大音量の電気楽器音楽再生、ゲーム症候群 現代人若者の病気です。

テレビ番組の中で対談番組のときに 時々ビンテージオーディオ機器がバックに映し出されています。すぐ目が行きますが バックの機器は飾りでしょうか?  それとも実働品でしょうか? 小生の ビンテージオーディオ機器は実働します。実働させるには 体力・努力・資金力 以外に時間がなければ 過去の遺物、骨董品機器を実働・維持することができません。その中で資金力については乏しいため 修復に必要な部品レベルまで時間がありますので加工・工作をします。道楽・趣味の領域で修復しています。

あくまでも自己責任範囲での修復作業内容となります。

記述内容は最初に記述した如く 過去からの記憶を元に個人的主観で記述しています。誤解釈、誤記載も多々ある中 ブログを最後まで流し読みいただき ありがとうございます。道楽を進める中で ちょっとしたヒントとなれば幸いです。自己責任での作業内容で骨董品機器蘇生・修復を期待いたします。
おかげさまで録音されたテープのデジタル化がぼちぼちと進行中です。

この道楽を継続するには LPレコード再生では比較的簡単に費用さえ覚悟すれば継承することができます。オープンテープデッキでは初期性能を維持するには 修復費用・修復技術が必要になります。記録媒体である磁気テープは Ampex(Quntegy) も数年前には生テープ生産が終了しました。国内ではすでに生産されていません。現在では旧BASF系の RGM 新品生テープを入手のみとなります。やはり時代の流れでしょうか?  磁気生テープは経年変化で特性が悪くなります。今回中古のテープも入手しましたがまともに動作するテープは数多くありません。ご注意を !! バクチです。新規に録音作業をする場合には古いメタルリールのみを利用して HUB巻きの新品生テープ購入が安価でありベストと感じました。
デジタル音源では記録媒体 16Gフラッシュメモリーカードであれば千円ほどで入手できます。それに比較してアナログ音源を維持するには高額出費を覚悟しなければなりません。これらが自己満足、道楽・趣味の領域です。

修復・調整作業については自己責任で !!!

多少とも修復作業内容及び薄学な知識をご理解いただければ幸いです。


無銭庵 仙人の独り言

そろそろ話のねたも底が見えてきました。次は何をいじくに回すか 思案中です。気分転換には 月に一度必ず辺鄙な田舎の山小屋に一人入山します。仙人生活と水のみ百姓の真似事です。自然との戯れはリフレッシュできます。
WE 421A と TANGSOL 5998

このブログ作成に際し デジカメで撮影しました画像は くだらない画像も含め 4~5倍の量を撮影しました。掲載しました画像には見苦しい画像も含まれています。 ご迷惑をお掛けしているかも知れません。道楽の愛嬌と思ってご勘弁ください。元画像は3Mピクセルありますが ブログサーバーの負荷が大きくなるため 縮専プログラムで 800×800 に縮小して掲載しています。詳細までは確認できませんが 雰囲気でもご理解いただければと思い作成しました。誤字、あて字も多々あると思います。小生は国語、数学、英語が苦手な凡人です。同じような道楽をされる方のヒントになればと思い 作成しました。ほかのブログと同様に 随時更新をしています。

三極管シングル 単管ステレオアンプ


東芝6080 と 東芝6A-S7G
2A3 を使ったアンプは昔から数種類作成しましたが 直熱管である為 夜間のリスニングには ハム音が気になり カソードの使った真空管を常用アンプとして使用です。次に工作しました三極管アンプはフランス生まれの R120 です。内部構造は4極管の三極管接続構造です。カソード抵抗値は750Ωから600Ωに変更しますがほとんど2A3と同じ回路定数で動作します。純粋の三極管ではありません。ヒーターは直熱管とは異なり残留雑音は少なかったです。2A3 によく似た純粋な三極管アンプが出来ないか ! と模索しますと 電圧制御用の三極管があることがわかり 最初に採用した真空管は 6AS7-G (gm 7000μmhos rp 280Ω μ factor 2.0) 同等管の戦車などの無線機に使用していました RCA軍用管 6082 24V管です。当時は 6080 は所有しておらず 24Vの外付けヒータートランスを使用して工作しました。電圧制御管(レギュレーター管)は プレート抵抗が低く gmが高い真空管です。カソードバイアス回路として作成しますので 多くの熱がカソード抵抗で消費されます。カソードバイアス電圧が高く ドライブ電圧も大きな電圧が必要となります。ドライブ回路設計に苦慮します。完成後音質を確認すると プレート抵抗が低いため ダンピング特性が良いことが判明します又 2A3 のようなヒーターハムの発生はありません。3ワット程度出力のアンプですが プレート電圧が高電圧となり 非常に効率の悪いアンプとなりました。あまり完成度が良くなかったため解体してしまいました。電圧制御管はヒーター電力も多く真空管壁は高温となるため放熱には注意が必要です。
GE 5998A

次に見つけた真空管は 5998 です。同じく電圧制御管ですが バイアス電圧が 6082 などと比較して低い真空管です。5998WE421Aとほぼ同等として扱うことができます。構造も観察しますと類似しています。

そののころ住居近くにありました通販専門の真空管販売業者から WE421A が手に入ったとの連絡で 即購入しました。真空管の現物を見ると非常にきれいな作りの真空管です。ベルマークがついた箱に入っていました。購入当時比較的製造時期が新しい真空管です。似通った時期に GE 5998A が入荷したとの連絡で WE421A と比較するために購入しましたが 失敗です。構造が 6080 とそっくりで 確かにバイアス電圧は 6080 に比較して低いのですが 使用中に 時々 電極間スパークが発生。スピーカーから大きなノイズが出ます。怖くて安心して使える真空管でないようです。色々当時は文献で調べると 電圧制御管は電極間リークの 起こりやすい真空管であり 効率も悪く使いにくい真空管であることが判りました。純三極管であり WE421A はヒーターハムも発生しません。夜間リスニングにも対応でき NFB量が少なくてすみます。三極管独特の音質で動作します。


この真空管アンプは 約20数年ほど前に工作しました。その後数回変更作業をしています。初期は整流管を使っていましたが 出力電圧が低いため ダイオードに変更となりました。しかし残留ハムが気になり その後整流管取り付け位置にチョークコイル15Hを取り付けたため デザイン的にバランスが崩れました。最初チョークレスで設計したためです。
シングルアンプは電源リップルが発生しやすい回路です。
WE421Aは 電圧制御管です。真空管の規格は片ユニット Max Plate Volts・Watts 250V 13W の規格で2A3 よりは小ぶりの真空管です。 真空管には三極管が二組入った複合管で 2A3が2本入っていることになりますが 今回はカソードバイアスでプレート電流が40mAプレート電圧ep-ekは250Vと設計しました。10Wの入力電力で動作させました。2A3に比較して軽い動作で 45 によく似た動作環境です。バイアス電圧は40Vでほぼ2A3に近い動作です。以前 6SN7 2段のドライバー段でしたが 現在は 12AX7 SRPP回路で感度は悪いですが動作しています。出力電力は3W弱ですが 三極管独特のダンピングのよい 心地よい音で動作します。

シャーシーは 200×300 1.5t の平シャーシー取り付け木枠を作りました。気に食わなければ 10箇所のねじで平板シャーシーの取替えで事が済みます。平板アルミであれば電子部品屋まで足を運ばなくても近くのホームセンターで各種のアルミ板は簡単に購入できます。木枠のハンドル部が工作の時には取り付け部品をいためません。内部点検作業も非常に簡単に出来ます。小生の自作アンプはほとんど同じ構造の大きさは異なりますが 木枠とアルミ板構造で作成しています。アルミ板は200×300 300×400 1.5tから2.0tを使用し 時には250×400のシャーシーを作成します。側板の厚みは12mmですので 430mm以下の本体幅となります。19インチ標準ラック幅を超えての設計はしません。ほとんどのメーカー製機器は標準ラック搭載が可能となるように設計されています。機器高さも 1Uの寸法44mmを基準に作成します。(1Uが2inchとの解釈もあります)3Uであれば 44×3=132mm となります。DCD-3500GのCDデッキでも木製キャビネットを取り外せば435mmとなり19インチ標準ラックに搭載は可能です。今回修復しました TEAC X-10R でも標準ラック搭載アダプターがありました。ほとんどのメーカー製機器の幅は435mmを超えていないと思います。ラック用棚板に搭載するからです。ラック取り付けねじ部を含めると482mm幅です。

某格式のあるホテルのBGM館内放送では デッキが標準ラックに搭載され 非常放送設備の一部として TEAC Xシリーズ が採用されていました。9..5cm/secのテープスピードで オートリバース再生モードを使用しての館内BGM放送です。10インチテープには JASRAC シールが貼り付けられたテープを使用していました。供給会社より定期的に館内BGMテープが入れ替えられていました。海賊版のミュージックテープと異なります。同じく町の有線放送会社においても長時間再生可能なデッキとして重宝がられていました。


by musenan sennin

  

0 件のコメント:

コメントを投稿